2003 Fiscal Year Annual Research Report
EU統合過程における、各種の法接近の手法の比較分析
Project/Area Number |
15730060
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中西 康 京都大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (50263059)
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Keywords | ヨーロッパ契約法 / 抵触法 / 実質法 / EU法 / 法接近 / 国際私法 |
Research Abstract |
本年度は、ヨーロッパ契約法の将来に関するEU委員会の2001年と2003年の報告を素材として取り上げて、EU統合過程における各種の法接近の手法の比較分析を行った。 契約法に関する共同体法の現状は、包括的なものではなく、問題毎に各種の派生法(主に指令)が散在している。2001年委員会報告報告は、分野ごとの調和の方法によっている、契約法に関する共同体法の現状について、各国法の併存が域内市場の作用に悪影響を及ぼしているのではないか、調和されている部分についても、各国毎に統一的な運用が確保されていないのではないかとする。このような現状認識にもとづいて、将来の選択肢として報告が注目するのは、統一的なヨーロッパ契約法典の作成である。 しかしながら、ECの権限の観点からすると、そのような一般的な契約法典を作成する権限がECに存在するかは、最近のEC裁判所のタバコ広告指令判決からすると、疑わしいことが指摘できる。 また、ヨーロッパ契約法典の妥当形式に関しても、いまだ不明確な点が存在する。各国法を置き換えずにそれと併存する法典の場合でも、契約当事者がその適用を合意してはじめて適用されるのか、それとも当事者が合意で排除しなければデフォルトルールとして適用されるのか、このいずれかが問題となる。前者の場合には、各国法の併存状態は変わりがなく、併存する各国法にもう一つ選択肢を追加するにすぎないので、域内市場への影響という点で意味がない。後者の場合、何が純粋国内事案で、何がヨーロッパ的事案で、何がそれを超えて国際的な事案であるのか、という微妙な区別が問題となる。 このように、契約法に関して包括的な法典作成という形で実質法レベルでの法接近をはかるのは、現状では疑問の余地があり、契約準拠法に関するローマ条約などの抵触法の統一で十分ではないのか、というのが、以上の検討から得られた一応の結論である。
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