2003 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ原発政策の変遷と法問題―ミュールハイム=ケアリッヒ事件と脱原発
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15730062
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Research Institution | Sasebo National College of Technology |
Principal Investigator |
樺島 博志 佐世保工業高等専門学校, 一般科目, 助教授 (00329905)
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Keywords | ドイツ / 原発 / 手続的参加権 / 基本権保護義務 / 原子力法 / 環境権 / 手続的権利 / 脱原発 |
Research Abstract |
ミュルハイム=ケアリッヒ事件は、原発設置手続における市民の手続的参加権が争われた憲法裁判である。ドイツ連邦憲法裁判所は、一般論として、市民の手続的参加権を、憲法上の法益として認めた。その理論的根拠は、ドイツ基本法2条2項の生命および健康に対する基本権が、客観法的機能として基本権保護義務を含んでおり、原子力法上の手続的参加権は基本権保護義務の具体化として理解される、という点に存する。連邦憲法裁判所による本決定は、原告訴願者側が敗訴したものの、原発設置許可における手続的権利を憲法上保護された法益として解釈したリーディング・ケースである。ドイツでは、本事件を含め、多くの原発訴訟を通じて市民の権利が確立されていき、このことが2000年に合意された脱原発政策を促し実現させた一つの契機だと考えることができよう。 このような基本権解釈を我が国の伊方原発事件に照らして考えると、法定手続保障(憲法31条)の問題として争われた市民の手続的参加権も、むしろ、憲法13条の生命・幸福追求権の保護義務の問題として、理論的に再構成することができる。環境権を憲法上の基本権として捉える際に、本事件により展開された基本権保護義務論を参照することによって、手続的権利の固有の憲法的意義を明らかにすることができる。この考察によって、我が国の憲法解釈および基本権理論にとっても、有意義な示唆が得られる。
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Research Products
(1 results)