Research Abstract |
研究機関の第二年度となる今年度は,大きく二つの作業を行った.第一は,ゲーム理論,フォーマルモデルを用いた官僚制研究について,既存の研究を整理しながら,筆者自身の分析を加えることにより,一般性の高い理論構築を進めることである.第二は,第一の作業でなされた一般性の高い理論を,具体的な事実に照らして,経験的に検証する方法の模索である. 第一の作業は,具体的には,官僚制の様々な活動を,(1)官僚制と政治的プレイヤー間のゲーム,(2)官僚制内部の部局間,構成員間のゲーム,(3)官僚制と市民間のゲームという大きく三つの側面から総合的に理解する試みである.その成果は,『ゲームとしての官僚制』と題した単著の出版物として公刊することができた.様々な先行研究を,総合的な視点から位置づけなおすことで,この分野の研究の見取り図を示すと同時に,筆者自身がすべてのモデルを新たに解き,命題を提示していくことで,筆者なりの行政,官僚制についての理解を示すことができたと考えている. 第二の作業については,具体的には,官僚制についてのフォーマルなモデルを基盤としながら経験的な検証を行っている先行研究の整理を行った.事例研究,計量分析,実験など,様々な実証研究の方法を用いた近年の研究について,その動向をまとめた.その成果は,「官僚制についての実証研究の動向:ゲーム理論,フォーマルモデルとの接合」と題する雑誌論文として公表した.
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