特別職公務員制度の構造と動態に関する研究―戦後日本の政治行政関係の一側面―

2003 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 15730076
• Research Institution: Tokyo Metropolitan University
• Principal Investigator: 伊藤 正次 東京都立大学, 法学部政治学科, 助教授 (40347258)
• Keywords: 特別職公務員制度 / 政官関係 / 合議制組織 / 公務員給与

Research Abstract

研究期間の第1年度目となる本年度は、特別職公務員制度の基本構造を理解するため、関連文献・資料の収集・分析を行うとともに、特別職公務員制度と現代日本の政官関係を規定する制度構造との連関を明らかにするための準備作業として、合議制行政組織の新設に関する事例研究を開始した。具体的には、第1に、内閣官房に設置された「幹部公務員の給与に関する有識者懇談会」の資料の分析を通じて、特別職公務員給与法の制定過程と変遷経過を追跡し、現行の特別職公務員制度の歴史的起源と構造を解明する作業を試みた。特別職の公務員には、大臣等の執政職、大使等外交関係の職に加え、各種合議制行政機関の委員等が含まれるが、これらの特別職の範囲は、給与法制によって確定されている。同時に、特別職公務員給与法は、各職の給与を差異化しながらランク付けすることによって、とくに合議制行政機関の組織的地位を規定する機能を果たしている。一般職公務員制度に関しては、職階制の挫折を給与法が代替する形で職務のランク付けが行われたことが指摘されてきたが、特別職公務員制度についても、給与法制を通じた「報酬秩序」と「組織秩序」の補完関係の存在を指摘することができるのである。第2に、こうした「報酬秩序」と「組織秩序」の関係が現代の政治行政過程でどのように顕現しているかという点を解明するため、食品安全委員会の新設、司法試験管理委員会の改組という2つの事例研究に着手した。前者については関係者へのインタビューを行ったが、後者については資料収集を終えた段階であり、研究成果にまとめ上げる作業は来年度の課題である。なお、上記の研究成果については、平成16年5月に開催される日本行政学会において、「日本の特別職公務員制度と合議制行政組織制度」と題して報告する予定である。