2004 Fiscal Year Annual Research Report
マクロ通話需要モデルの構築とトラフィックデータによる計量分析
Project/Area Number |
15730101
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
島根 哲哉 東京工業大学, 大学院・情報理工学研究科, 助手 (90286154)
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Keywords | 重力モデル / 一般化最小二乗法 / 頑健推定量 / 電話トラフィック / 除外変数問題 / 通話需要 |
Research Abstract |
本課題は,電話通話需要をそのトラフィックデータを通じて分析するための数理モデルの構築と,統計学的に頑健な計量分析の手法の開発を目的としている.電話通話需要のデータとしては,90年代以降の都道府県間の双方向通話量データがあげられるが,本課題においてもこのデータを通じた分析を目指した.同様のデータ形式をした現象として貿易量や交通流があるが,これらのデータの計量的分析手法として有力な重力モデルを本課題でも採用した.重力モデルは強力な説明力を持つ経験モデルとして知られる一方で分野によっては理論に整合的な数理モデルとしても解釈できるという特徴がある. この重力モデルの形式的な特徴としては,対象となる地区の数をn個としたとき,それぞれn個の出発地と到着地の属性のデータと,出発地・到着地の組み合わせ数であるn(n-1)/2個からなる分離性データによって,より数の多いn^2個のトラフィックを説明することである.この形式的な特徴を生かすことで,一部に除外変数が含まれている場合であっても頑健な推定を実行可能にすること,もしくは除外変数が存在し定式化に問題を残している可能性を検定する手続きを開発できると考えられる.そのためには,いくつかのトラフィックデータを組み合わせたオッズ比などの交差積を作り,一部の要因だけを残すように式を導き,これによって除外変数の影響を限定し,さらに交差積を取ることで組み合わされた誤差項を検討することを通じて除外変数の存在について検定を行う.実際に推定する際には対数を取るため,交差積をとる操作は線形変換として表現され.また推定は一般化最小二乗法として定式化された.これらの変数の変換および回帰式としての表現は一貫して行列を用いた表現を積極的に用いたため,従来取り組まれてきた手法に比べ,見通しの良い分析手続きとなった. 整合的な変数の変換規則の開発とこれを用いた回帰推定と検定の手順の手法を実際に通話需要分析に適用することを本年度の目標としたが,当初のもくろみよりもこれらの推定手法開発に多くの時間を要してしまい,また結果として検定を設計することが困難であることが解析的に明らかになり,実証的な分析を行うという目標を達成するには至らなかった.しかしながら,重力モデルの一般的推定手順の改良を行うことを通じて,対数化された重力モデルの特質に関して多くの知見を得ることができ,新しい推定の手順を提案できたことは,今後通話需要研究を推進していく上で,また重力モデルを回帰分析する際のモデルの特定化手続きについて,有益な成果を得たと考える.
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Research Products
(1 results)