2003 Fiscal Year Annual Research Report
資金制約に直面する企業の寡占産業における行動に関する考察
Project/Area Number |
15730107
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
川上 敏和 福島大学, 経済学部, 助教授 (30292460)
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Keywords | financial constraint / repeated game / predatory pricing |
Research Abstract |
本研究はfinancial constraintに直面する企業間の協調の問題について考察するものである。具体的にはKawakami and Yoshida(1997)が採用したfinancial constraintの仮定、すなわちBenoit(1984)流の仮定を修正し、financial constraintに直面する企業が破産する状況に不確実生を導入し、同時にライバルがfinancial constraintに直面するかどうかに関する情報の非対称性を導入する。この仮定の下では、最初にpredatory pricingを行い、もしそれに耐えて企業が生き残ったならば、その後協調を行うというタイプの戦略が均衡となる。何故なら、predatory pricingに耐えて生き残ることは、相手がfinancial constraintに直面しないタイプである可能性が高いことを意味するからである。更に、企業が将来利得を重視すればするほど、つまり将来利得の割引率が1に近ければ近いほど、企業はより長期間predatory pricingを続ける誘引が発生し、従って企業はより競争的に行動することが示される。何故なら、割引率が1に近いケースでは、predatory pricingのコストは相手を破産に追い込み、その後市場を独占することによって得られる利得によって充分回収が可能となるからである。この結果は、割引率が1に近いケースに分析が集中している現在の繰り返しゲームの理論を応用した企業間協調の研究に警鐘を鳴らす意味もある。上述の内容を含んだシンプルなモデルを構築し分析を行った。研究成果は既に2003年度日本経済学会春季大会で報告し、学術誌に投稿済みである。 参考文献 Benoit, J.- P.1984. Financially Constrained Entry in a Game with Incomplete Information. Rand Journal of Economics 15: 490-499. Kawakami, T., and Y. Yoshida. 1997. Collusion under Financial Constraints : Collusion or Predation When the Discount Factor is near One? Economics Letters 54: 175-178.
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