2003 Fiscal Year Annual Research Report
住宅の市場構造、所有・占有権、住宅政策が住宅の維持管理投資、品質に与える影響
Project/Area Number |
15730116
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
岩田 真一郎 富山大学, 経済学部, 助教授 (10334707)
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Keywords | 所有権 / 借家権 / 借地権 / 借地借家法 / 住宅 / 品質 / 賃貸外部性 / 費用便益分析 |
Research Abstract |
1 持家,借地,借家という住宅の所有・占有関係の違いが,建物の品質に対してどのような影響をもたらすかを分析した。第1に、借地上の建物と借家の品質は、賃貸外部性(賃貸人が将来の資産価値を考慮しない性質のこと)のため、持家の品質よりも悪化する。第2に、借地借家法による賃貸権保護は、借家については賃貸外部性の影響を一層強める方向に働くが、借地についてはそれを弱める場合も強める場合もあり得る。ただし、この場合も借地上の建物の品質は持家よりも悪い。実証研究の結果、住宅の品質が健全である確率は、借地が2%、借家が6%程度、持家に比べ低いことが確認された。さらに、賃貸権が保護されている借家ほど、品質が良くなる確率は低下するが、借地については、賃貸権保護により品質が低下する場合も上昇する場合もあることが確認された。 2 日本の借地借家法は、将来の継続家賃の値上げを困難にしている。したがって、家主は居住期間の長い借家人より短い借家人のほうを好む傾向にある。しかし、家主はどの借家人の居住期間が長く、どの借家人が短いのかを事前に観察できない。このような場合に借家権保護が借家人の厚生にどのような影響を与えるのかを分析した。家主が十分リスク回避的で、最悪の事態を最善にしようと行動する場合、借家の新規家賃は、借家権保護がない場合に比べ、ちょうど継続家賃の損失を相殺するように上昇する。この場合、継続家賃下落の恩恵を受けない短期の借家人の厚生は悪化し、恩恵を受ける長期の借家人の厚生も改善されることはない。定期借家法施行後と施行前のデータを用いてこのことを実証分析したところ、理論と整合的な結果を得た。 データの記述統計や実証分析を行ううえで、研究費で購入したPCを使用した。また、共同研究者との打ち合わせ、学会発表、研究会発表の際に、ノート型のPCを使用した。また、研究費を用いて英語の校閲を頼んだ。
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Research Products
(1 results)