2004 Fiscal Year Annual Research Report
住宅の市場構造、所有・占有権、住宅政策が住宅の維持管理投資、品質に与える影響
Project/Area Number |
15730116
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
岩田 真一郎 富山大学, 経済学部, 助教授 (10334707)
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Keywords | 中古住宅市場 / 転売外部性 / 情報の非対称性 / 転売 / 維持管理投資 |
Research Abstract |
中古住宅市場では、買い手の情報不足により売り手の行った維持管理投資が転売価格に十分反映されないという転売外部性問題が生じる。本研究は、この転売外部性が持家所有者の維持管理投資や転売行動にどのような影響をもたらすかを分析した。 持家所有者は、中古住宅購入予定者が観察できる維持管理投資と観察できない維持管理投資を実行する。ここで、中古住宅市場の転売外部性問題に直面する、将来、住宅を転売予定の所有者と、転売外部性に直面しない、転売予定のない所有者の最適化行動をそれぞれ理論モデル化し、住宅の維持管理投資にどのような相違が生まれるのかを検討した。 その結果、転売計画のある所有者は、計画のない所有者に比べて、観察できない投資は減らすが、観察できる投資は増やす場合が存在することが明らかになった。すなわち、転売計画のある所有者は、住宅の中身より見た目を重視した投資行動をとる傾向にある。そして、観察できない投資の減少が、観察できる投資の増加を打ち消すほど大きい場合、両方の投資額を合計した総維持管理投資額は、転売外部性により減少することが明らかになった。 さらに、転売外部性は、住宅の転売価格の低下を通じて、持家所有者の転売機会自体を減少させることを理論的に示した。 次に、平成15年の住宅需要実態調査を用いて、中古住宅市場における転売外部性の影響を計測した。その結果、転売外部性が転売機会を阻害していることは確認できたが、その影響は小さく、有意ではなかった。しかし、転売外部性が総維持管理投資額を減少させていることは明らかになった。すなわち、将来、住宅の転売を考えている持家所有者と、今後も当該住宅に住み続けようと考えている持家所有者の総維持管理投資額を比較した結果、前者の金額が73%少ないことが確認できた。これは、日本においては、転売外部性問題が維持管理投資に関して深刻な影響をもたらしていることを意味する。
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Research Products
(1 results)