2003 Fiscal Year Annual Research Report
インサイダー取引規制における取引所間競争と政府の干渉の影響に関する理論的分析
Project/Area Number |
15730153
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
太田 亘 名古屋大学, 経済学研究科, 助教授 (20293681)
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Keywords | 証券市場 / 取引メカニズム / インサイダー取引 / ティックデータ |
Research Abstract |
本研究は、証券取引において、複数の取引所で取引が可能であるという市場分断化のもとで、望ましい規制、特に望ましいインサイダー取引規制を明らかにすることが目的である。まず理論的分析の前提として、現実の取引に関して調査を行うため、日経クイック情報のティックデータを購入し、分析の準備をした。ティックデータは、証券取引所が配信したレコードを収集したものであり、これを分析することで、投資家や証券会社がどのような注文を取引所に発注したかを推測することができる。データは、取引所に出された注文が、取引ルールに基づいて処理された結果生成されたものであり、取引ルールに従ってデータの加工を行った。また複数取引所で取引されている銘柄の名寄せを行い、取引分断化の効果を分析する準備をした。ティックデータを扱うに際しての注意事項および分析に必要な取引ルールを「ティックデータについて」という論文にまとめている。その上で予備的分析を行い、異なる取引ルールを採用している外国の取引所で観察される価格集積という現象が、日本の証券取引所でも観察されることが明らかになった。価格集積は、取引価格の末尾が0や5であることが多い、という現象である。このような現象が顕著に観察されるのは、価格帯が1000円から2000円で、最低売買単位が小さく,取引が不活発で、日経平均に採用されている銘柄である。またザラバ取引だけでなく、板寄せ取引においても観察される。これは投資家が取引所に注文を出した結果であり、このような現象をふまえた上で投資戦略を立てることにより、より効率的な取引を行うことができると期待される。これはインサイダー取引にとっても同様であり、今後、このような取引の性質と投資家の注文戦略の関係について考察を行い、望ましい規制について分析する予定である。
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