2003 Fiscal Year Annual Research Report
資産価格決定メカニズムに対する市場制約の影響についての理論的・実証的考察
Project/Area Number |
15730156
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福田 祐一 大阪大学, 大学院・経済学研究科, 助教授 (00243147)
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Keywords | 合理的バブル / 時系列テスト / 分散制約テスト / 流動性 |
Research Abstract |
本研究の目的は,ノイズと呼ばれる非合理性,資産保有制限,証券の換金容易性から導かれる市場流動性などの要因を明示的に考慮した上で資産価格モデルを導出し,そのインプリケーションを検証することにある。この目的を実現するために,本年度は文献渉猟とデータの整理を中心に行った。文献渉猟を通じて,以下の2つの点が明らかになった。第1に,資産価格を形成する1つの要因である合理的バブルを検証する方法の検出力が,それほど強いものではないという点である。従来,現実の資産価格が合理的バブルとファンダメンタルズという合理的要因では説明できないことを理由に,市場の非合理性の根拠とすることが多かった。この検出力の弱さは,これまで棄却されてきた合理的バブルが現実の株価に存在する可能性を示し,市場の非合理性の根拠を脆弱なものとする。そこで,「合理的バブルに対する分散制約テストと時系列テストの検出力」という論文において,いくつかの合理的バブルに対して時系列テストと分散制約テストの識別力を分析した。その結果,いくつかの合理的バブルに対しては検出力が弱いことが明らかになった。 第2号に,オプションといった取引費用が比較的安いと考えられている派生証券価格にも,市場流動性が影響するケースが多いということである。これは,特に取引日の原証券価格と大きく離れた権利行使価格のコールオプションやプットオプションに強く影響している。具体的には,ブラックショールズ公式をもとに計算されたインプライド・ボラティリティが,原証券価格と乖離の大きい権利行使価格では大きくなるという現象として観察されている。この現象は,証拠金制度等の市場制約等に起因する流動性と関連付けられることが多いが,このことを検証していくのが,次年度以降の課題である。
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Research Products
(1 results)