2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15730163
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
秦 劼 立命館大学, 経済学部, 助教授 (40329751)
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Keywords | 情報カスケード / ベイズ学習 / クラッシュ |
Research Abstract |
証券市場ではブームとクラッシュが絶えず繰り返される。なぜバブルが起きるのだろうか。近年、ファイナンス理論の研究者達は証券市場での情報伝達過程とその影響に注目し、情報カスケード(Informational Cascade)を研究し始めた。ある状況のなかで、投資家達が自分の持っている情報を無視し、他人の行動に追随する。結果として、多くの人が同じ買い(売り)行動を起こし、ブーム(クラッシュ)を引き起こす。バブルの発生を安易に投資家の非合理的行動に帰着せずに、情報の伝達過程に注目を向けたのはこのアプローチの特徴である。但し、従来のモデルはいくつか非現実的な前提を設けている。例えば、現実の市場では価格が絶えずに変動し、情報が絶えず価格に織り込まれていくが、このモデルは価格が変動しないと仮定している。また、投資家間の情報格差なども考慮していない。 本研究は複数証券が取引される場合の情報伝達とカスケードを分析している。現実の証券市場では数千銘柄の株式取引されている。ある証券の価格には、その証券に関する情報だけではなく、市場全体に関する情報にも影響を与えている。投資家達が市場全体の動きを注意深く観察するのが一般的である。そこで、本研究は、複数証券が取引される場合の情報の伝達を数学モデルとして記述した。 このモデルのなかでは、投資家の持つ私的情報の中に、経済全体に関する情報と個別の証券に関する情報が混在し、両者を区別することができない。ただし、取引後、すべての証券の情報を総合すると、市場全体に関する情報を取出せる。さらに、市場全体の情報を個別証券の注文量と比較することで、個別証券に関してもより正確の情報が得られる。過去の全ての取引は公的情報であり、情報の伝達と学習過程に通して将来の取引を影響している。ある証券における偶然な買い優性あるいは売り優勢は市場規模のカスケードを引き起こせる。また、個別証券におけるシグナルの情報量に比べ、市場全体の動きの情報量が大きいほどカスケードの波及効果が大きい。 上記の研究成果は大阪大学社会科学研究所、立命館大学ファイナンスセンターなどで報告した。学術誌に投稿準備中である。
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