2004 Fiscal Year Annual Research Report
ゲーム理論に基づく信託の金融仲介機能に関する基礎研究
Project/Area Number |
15730165
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Research Institution | Kyushu International University |
Principal Investigator |
西山 茂 九州国際大学, 経済学部, 助教授 (20289565)
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Keywords | ゲーム理論 / 信託 / 信託機関 / 金融仲介機関 / 金融仲介機能 |
Research Abstract |
1.(研究の主眼)本研究は投資裁量権の欠如という独自性に即して信託機関の金融仲介機能に関する理論的な考察を行うことを意図している。(投資裁量権の欠如とは、受託資産の運用が信託機関の意思決定によらず、完全に委託者の指示に基づいて行われる場合であり、これは他の金融仲介機関にはみられない信託に固有な独自性である。) 2.(本年度の研究内容)本年度は、これまでの研究成果を前提として、受託者である信託機関と委託者との間のネットワークの形成という視角から資産の「受託関係」を捉え、数理的なツールとしてグラフ理論を適用したモデリングを展開した。具体的には、信託機関の金融仲介機能をその投資裁量権の有無に基づいてこのようなネットワークにおける資金フローの方向づけとその決定として取り扱うモデリングに重点的に取り組んでいる。これによって信託の投資裁量権についてゲーム理論を適用した統一的な定式化が可能になると考えられる。その際、信託機関と委託者の利得関数として、受託資産の投資裁量権の有無とともに、信託機関が取得する信託報酬、資産の運用収益の分配とリスク負担、非裁量型資産を選択する委託者の経済的利益(直接金融と比較した課税面での有利な取扱、取引名義の不表出などを想定)による定式化を行っている。 3.(本年度の研究の成果と意義)これまでの研究による成果として、金融仲介機関を信託機関のみと仮定すると、信託が裁量型資産と非裁量型資産の受託を同時に行う場合(本来的な金融仲介機能と事実上の直接金融への関与)にユニークなナッシュ均衡が成立することはすでに解明されている。上掲のモデルによって、ネットワークにおける資金フローの方向づけという理論的により厳密な定式化のもとで同様の結論を捉えることができる。また信託機関と委託者との間の情報の非対称、信託とその他の金融仲介機関との並存などの条件もこの方向づけに与える効果として導入可能であると考えられる。
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Research Products
(1 results)