2003 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀カタルーニャの地域工業化における消費者・商人ネットワーク・更紗捺染業者
Project/Area Number |
15730170
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
奥野 良知 愛知県立大学, 外国語学部, 講師 (20347389)
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Keywords | 商人ネットワーク / 交易離散共同体 / 綿業 / 更紗(捺染綿布) / 半奢侈品 / 18世紀 / ブルボン朝スペイン / 啓蒙改革 |
Research Abstract |
平成15年度は、準備作業として、まず、山川出版社『世界歴史体系 スペイン史』の「18世紀」の分担執筆作業と兼ねながら、18世紀スペインの全体像の把握に努めたが、なかでも特に、ブルボン朝スペインの諸政策がどの程度まで18世紀スペインにおける更紗消費の増加とカタルーニャ商人ネットワークの展開に寄与したのかという点の解明に心掛けた。というのも、通説とされてきた見解では、18世紀カタルーニャ綿業の発展は、ブルボン朝の諸政策、すなわち、1)カタルーニャ・アラゴン連合王国の消滅に伴う「国内」関税の廃止、2)啓蒙的諸改革、からから大きな恩恵を受けたとされているからである。 まず、1)に関して、統治構造の変化に伴い「国内」関税が廃止されて以後、カタルーニャ商人ネットワークのスペインにおける展開が進んだのは確かなようである。だが、「国内」関税廃止が国内市場の形成を俄かに促したとはいえず、だからこそ、カタルーニャ商人の交易離散共同体ネットワークが展開したといえる。また、2)に関して、それがスペイン領アメリカ植民地との貿易を促すことにある程度成功したのは確かだが、カタルーニャ産更紗が国内を主な販路にしていたことは近年の諸研究から明らかで、更紗の市場として植民地が寄与したとはいえない。むしろ、植民地貿易の発展は、「半奢侈品」である更紗の消費者としての貿易商などの懐を暖めたという点において、更紗の消費に貢献したといえよう。しかし、それ以上に啓蒙改革が更紗の消費とカタルーニャ商人ネットワークの展開を促したということはなさそうである。このように、本年度の研究では、ブルボン朝の諸政策の効果は、決して過大評価されるべきではないとの結論を得た。
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Research Products
(2 results)