2004 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀カタルーニャの地域工業化における消費者・商人ネットワーク・更紗捺染業者
Project/Area Number |
15730170
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
奥野 良知 愛知県立大学, 外国語学部スペイン学科, 助教授 (20347389)
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Keywords | カタルーニャ / スペイン / 交易離散共同体(Trading diaspora) / カタルーニャ商人ネットワーク / 更紗捺染業者 / 毛織物製造業者 / 商人と製造業者 / 地域工業化 |
Research Abstract |
平成16年度は、本務校で教務委員の激職にあったため、なかなか研究時間が確保できず苦労した。それでも、何とか学内業務を調整して3月にはバルセローナに行き、プンペウ・ファブラ大学に所蔵されているトゥラリョ家文書Fons Torelloを、同大学歴史研究所所長のジャウマ・トーラス氏の好意で閲覧できた。トゥラリョ家はカタルーニャ内陸部に位置するイグアラーダという町の毛織物製造業者で、この町の伝統的な毛織物製造業者たちが17世紀からバルセローナの(都市の)商人のために働いてきたのに対し、トゥラリョ家を含む3つの新興毛織物業者は、18世紀にカタルーニャ商人ネットワークを利用して、18世紀半ばにはマドリードを主要な販路としながら急成長を遂げた。今回は、このトゥラリョ家がカタルーニャ商人たちから受け取った書簡と会計文書を閲覧することができ、在マドリードのカタルーニャ商人からの毛織物の品質に対する厳しい要求や、両者の間での価格についての激しいやり取りの様子を知ることができた。確かにトゥラリョ家は毛織物業者であって、更紗捺染業者ではないが、更紗捺染業者と同様に、事業拡大のためにはカタルーニャ域外の市場が不可欠であったことと、イベリア半島の主要都市に展開していたカタルーニャ商人と製造業者たちが、強い相互依存関係にありながらも、あくまでそれぞれ独立した関係にあった様を知ることができたことは、非常に有益な成果であった。また、カタルーニャ州立図書館で、数年ぶりにバルセローナ最大の更紗捺染業者だったゴニマGonima社の史料を閲覧し、不足していた部分を補えたことも重要な成果であった。また、ジャウマ・トーラス氏を初め、何人かの研究者からカタルーニャでの近年の研究状況の進展具合を聞くこともできた。そこで、平成17年度はこれらの成果を生かしつつ、昨年の程の激職にもないので、研究の一層の進展に努力したい。
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Research Products
(1 results)