2003 Fiscal Year Annual Research Report
第三共和政期フランスにおける社会改革とパテルナリスム―労働局を中心として―
Project/Area Number |
15730171
|
Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
齊藤 佳史 専修大学, 経済学部, 助教授 (90317628)
|
Keywords | 第三共和政 / 社会改革 / 連帯主義 / 新自由主義 / パテルナリスム / 労働局 / フランス鉄鋼協会 / 労働高等評議会 |
Research Abstract |
当該研究の目的は、1891年から1914年にかけてのフランスにおける労働局の活動を分析することにある。その際、労働者向けの社会政策をめぐるパテルナリスム(経営家父長主義)と国家介入の交錯を把握することを特に重視している。上記の研究目的のために、本年度は、19世紀から20世紀にかけてのフランスの工業化・社会保障・労働問題等に関する文献を購入し、第三共和政期における杜会改革思想や労働局の活動に関する先行研究の動向を検討した。また、フランスでの史料収集活動として、国立文書館において、労働局が関わった問題や社会立法に関連する未公刊一次史料を閲覧した。その結果、第三共和政下の連帯主義の潮流を背景として、社会政策の領域における国家介入が増大する状況が解明された。連帯主義は、国家介入と自由主義の調和的発展を目指す意味で、19世紀末から20世紀初頭の世紀転換期のフランスにおける新自由主義の支柱となっていた。他方、サン=ゴバン文書館に所蔵されているフランス鉄鋼協会に関する文書(書簡・議事録・報告書など)を閲覧した結果、社会立法の制定が、鉄鋼協会会長ピノと労働局長フォンテーヌの緊密な連携によって推進された事実が明らかになった。彼らの個人的連携なしには鉄鋼協会の活動に対する国家介入は容易に実現し得なかった。パテルナリスムの私的主導性と労働局を通じた国家介入は、双方の歩み寄りによって並存することが可能となった。その他、『労働局報』・『労働高等評議会報』・『労働争議・調停統計』などの閲覧を通じて、労働局の社会調査における統計・モノグラフィー分析の使用、経済近代化の先駆としての労働局の活動、労働高等評議会と労働局との協力関係などが解明された。
|