2003 Fiscal Year Annual Research Report
保険と金融の融合が促す保険ビジネスの変革に関する国際比較―リスクの証券化を中心に
Project/Area Number |
15730205
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岡田 太 日本大学, 商学部, 講師 (30318323)
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Keywords | 異常災害債券(キャットボンド) / 保険(リスク)リンク証券 / リスクの証券化 / 特別目的(再保険)会社 / スプレッド / シャープレシオ / 再保険市場のハード化 / 金融と保険の融合 |
Research Abstract |
保険リスクの証券化の事例研究と市場動向 2003年の異常災害債券(キャットボンド)市場は、発行数7件、発行額18億ドルであった。このうち、7月に、全国共済農業組合連合会(JA共済連)が日本国内における2回目の地震・台風災害のリスクを証券化して、世界最大規模の550億円の再保険カバーを入手した。証券化のスキームは、スイス再保険会社がJA共済連から再保険を引き受け、それをケイマン諸島の3つの特別目的会社に移転し、その特別目的会社が欧米の機関投資家向けに米ドル建て証券(5年満期・額面4億7000万ドル)を発行する。債券の格付けはBa1/BBB-〜Baa3/BBB+(ムーディズ/S&P)、利回りは、LIBOR+2.45%〜3.50%である。また、9月には、2006年開催予定のFIFAワールドカップ・ドイツ大会に関して、自然災害の他に、初めて戦争・テロリズムや参加予定国のボイコットなどのリスクが証券化された。12月には、世界で初めて戦争やテロ、伝染病を含む異常災害による死亡リスクが証券化された。 1999年以降、債券の平均発行件数は8件、平均発行額は10億ドルで、市場は停滞していたが、2003年は対前年比で50%の成長を遂げた。証券化の対象となる保険リスクの多様化が進むとともに、エンロン、ワールドコムといった事件から、より透明性の高い固定金利への投資を望む機関投資家の関心を集めたことが原因のようである。もっとも、これらの保険リスクと信用リスクをどのように比較すればよいか、その評価はまだ十分でなく、キャットボンドの利回りが比較的高いにもかかわらず、投資家の態度は慎重である。 証券発行のアレンジメントに関して、わが国の金融機関はまだ十分に関与しておらず、ビジネスモデル構築のうえでも課題を残している。この点、天候デリバティブ取引の日米比較から、保険と金融の融合を示す興味深い事実が観察された。
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Research Products
(2 results)