Research Abstract |
本年度は,主に人材派遣に関して,それに係る契約のオンバランス化が可能かどうかを検討した。その検討は,理論と実務の両面に及ぶ。 理論面として,人材派遣・オンバランス化の論理構築を試みた。具体的には,現代リース会計(国内外の改訂動向を含む)におけるリース・オンバランス化の論理を明らかにすると共に,人材派遣の仕組みと労働法制に関する文献を渉猟して,リース会計の論理を人材派遣に援用した。それによれば,人材派遣は,労働者派遣契約(派遣先と派遣元の契約)と派遣労働契約(派遣元と派遣労働者の契約)により成り立っているが,両契約が解約不能であれば,契約上の権利・義務は会計的に確定するから,オンバランス化が可能であるといえる。ただ,両契約の解約不能性について,派遣労働契約の場合は,法理的・経済的に概ね成立しうるが,労働者派遣契約の場合は,派遣元が,派遣先の中途解約に対して,労働省の指針(30日分の派遣料の支払請求:いわゆる最低補償)ではなく,契約法上許容される範囲内で経済的に合理的な行動(残期間の派遣料の支払請求)をとることが必要となる。 実務面として,契約実態を把握するためにアンケート調査を行った。調査対象は,関西圏にある人材派遣会社のうち,日本人材派遣協会に加盟している70社とした(回収率は24.3%)。それによれば,派遣元は,派遣先の中途解約に対して労働省の指針に従うケースが多いこと,また,派遣労働者を労働基準法上の最低補償(30日分の賃金支払)で雇止めにするケースがあることが読み取れる。このことは,派遣元が派遣先と対等の立場で契約交渉できているとは限らず,また,そのシワ寄せが派遣労働者に向けられている可能性があることを示唆する。 以上の研究成果の一部は,雑誌論文として発表したほか,ディスクロージャー研究学会第5回年次大会(2003年12月6日,大阪経済大学)において報告した。
|