2003 Fiscal Year Annual Research Report
会計基準設定のための概念フレームワークの国際的展開とその制度的意義に関する研究
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15730227
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Research Institution | Nagoya University of Commerce & Business |
Principal Investigator |
平賀 正剛 名古屋商科大学, 総合経営学部, 専任講師 (00329070)
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Keywords | 概念フレームワーク / 会計基準の国際的修練 / IAS / IASB(IASC) / AECA / スペイン / フランコ=ジャーマン型会計制度 / アングロ=アメリカン型会計制度 |
Research Abstract |
平成15年度は、フランコ=ジャーマン型会計制度の国において設定された概念フレームワークとして、とくにスペインにおける概念フレームワーク、『財務情報のための概念的枠組み』をとりあげた。スペインは、商法典およびプラン・ヘネラル・デ・コンタビリダといった会計法規を中心に会計制度が確立されているが、その一方で、民間機関であるスペイン企業会計経営協会(AECA)からも会計基準が公表されている。同機関による会計基準は、スペインのGAAPとして、広く企業会計に適用されている。今回研究対象とした概念フレームワークも同機関より公表されたものである。 スペイン版概念フレームワークの内容を検討した結果判明したのは、(1)スペインの会計基準をIASに収斂させることを目的に、IASC(現IASB)概念フレームワークをベースとして設定されたこと、(2)IASC概念フレームワークをベースとしながらも、随所に特異性がみられたこと、であった。とくに上記(2)について、具体的には、a)明瞭性および慎重性という二つの質的特徴、b)評価基準、c)利益をめぐる諸概念の3点で、IASCフレームワークとの相違がみられただけでなく、スペイン版概念フレームワークにおけるその他の諸概念と齟齬を生じていることが分かった。 このことは、スペインの会計制度が法律中心に構成されていることに起因していると思われる。スペインのように、法律が会計を規制している環境にあっては、その会計関連法が、企業会計の枠組みとして機能する。 スペインの会計法規における会計の目的は、IASと異なり、必ずしも投資意思決定有用性を志向してはいない。したがって、そこから導出される諸概念も、IASC概念フレームワークとは異なる。スペイン版概念フレームワークでは、スペイン会計法規で確固たる明文規定のある、上記a)、b)、C)の3点については、IASC概念フレームワークの内容を、そのまま受け入れることはできなかったものと考えられる。それがスペイン版概念フレームワークの内容に齟齬を生じさせている原因であるといえる。 以上の考察の結果、会計基準の国際的統一化の観点から概念フレームワークの導入を行なう場合、それは、フランコ=ジャーマン型会計制度においては、制度上の位置付けや内容の一貫性などの面で困難をともなう作業となると考えられる。
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Research Products
(1 results)