2004 Fiscal Year Annual Research Report
阿賀野川の環境史-生業複合が生み出す<風景としての自然>と新潟水俣病に関する研究
Project/Area Number |
15730231
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
関 礼子 立教大学, 社会学部, 助教授 (80301018)
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Keywords | 公害 / 水俣病 / かかわり / 生活世界 / 風景としての自然 |
Research Abstract |
本年度の調査・研究で明らかになった点は、主に、次の3点である。 1.川(自然)との関係性を創出するための「仕掛け」という視点 阿賀野川流域地域の生業複合の生活形態がいかなるものだったかを、生活史研究の手法を参照しつつ明らかにした。新潟水俣病の発生は、阿賀野川と住民との密接な「かかわり」を分断した。生業構造の変化は、川との「かかわり」を疎遠にした。にもかかわらず、現在もなお引き継がれる阿賀野川と住民との「かかわり」がある。盆の精霊送りはその例であるが、精霊送り=川への流し物については、河川美化の見地から消極的な意味づけがされている。 川との関係性を深めてゆく親水の観点が、近年の河川行政では重視されつつある。上述した研究結果から、過去の「かかわり」を参照しつつ、新しい「かかわり」を創造するだけでなく、現在、引き継がれている「かかわり」を肯定しうる仕掛けの必要性が示される。 2.風景の変化と生活世界の変化の相関、および過去の「かかわり」について 川との「かかわり」が大きく変化したということは、新潟水俣病の有機水銀暴露の過程が、今日の阿賀野川の生活風景から見えにくくなっているということを意味する。新潟水俣病問題を語り継いでゆくうえで、過去の生活世界を知ることは重要である。過去の生活世界を、古い写真の収集とそこから引き出される語りに着目しつつ、風景を復元する作業を行った。 また、生業、遊びなど、阿賀野川における「かかわり」の多様性が、行為の多様性(働きかけの多様性)であることに着目し、「かかわり」の詳細を「稼ぐ」、「拾う」、「獲る」などの動詞で分類・整理した。 3.新潟水俣病を語り継ぐ際に、「記憶の解放」という視点を導入し、社会的に構築された水俣病像の改変の必要性を示した。
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