2003 Fiscal Year Annual Research Report
先端医療技術の普及が家族に与える影響に関する社会学的研究
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15730238
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
武藤 香織 信州大学, 医学部, 講師 (50345766)
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Keywords | 難病 / 医学研究 / 当事者活動 / 血液・組織バンク / 当事者団体 |
Research Abstract |
今年度は、主に北米とヨーロッパの難病当事者団体と医学研究との関係についてその動向を文献とインタビューなどで把握することが中心となり、一方で日本の難病当事者団体および家族、支援者へのヒアリングを中心に、アプローチの仕方を考える一年となった。 北米には、NORD(National Organization of Rare Disorders)という稀少疾患団体の連合体がある。NORDとは、1983年に創設されたアメリカの稀少疾患団体の集まりであり、主な役割として、各疾患の情報提供をしているほか、北米で入手困難な薬剤を入手する支援、若手研究者への財政的支援などがある。また、NORDが実施してきた運動は、主に稀少難病研究への財政投資であり、これが2002年の「稀少疾患法および稀少疾患のためのオーファン・ドラッグ開発法」成立に結びついた。ハンチントン病の例のように、当事者自身が研究者と対等に渡り合い、ともに科学的発見のために努力するという物語は、アメリカの稀少難病の当事者団体に影響を与えた。例えば、PXE International(弾性繊維性仮性黄色腫の当事者団体)は、PXEに罹患した患者と近親者からの血液・組織を収集し、血液・組織バンクを運営している。一方、EUでは1998年、EUは稀少疾患をヨーロッパの5-8%の市民がかかわっている公衆衛生上の問題と位置付けた。また、Eurodis(ユーロディス)という疾患横断的な団体は、アメリカのNORDをモデルに、オーファン・ドラッグについてのヨーロッパでのルール作りに貢献することを目的とし、ヨーロッパにある12のDNAや組織血液バンクのネットワークづくりであるEurobiobank(ユーロバイオバンク)構想にも協力している。 我が国の場合、難病当事者団体は研究支援活動よりも、ケアの充実のために行政へ陳情するという運動を展開してきた。最近では、財政支出抑制にも伴い、当事者自身による相談事業が拡充される傾向にあり、単にケアを要する人々ではなく、ケアを担い合う存在として位置づけられている。中心的な関心となっていない医学研究との関係については、当事者団体のリーダーの高齢化や後継者問題、患者・家族と医師・研究者関係のあり方を深く模索する必要があると考えられ、次年度以降の課題としたい。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 武藤香織: "「確率」を引き受けるための支援-「生活上の知」から,「小特集=遺伝学・遺伝性疾患・遺伝カウンセリング--東京地裁平成15年4月25日判決を手がかりに」"法律時報. 934. 70-72 (2003)
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[Publications] 武藤香織: "医療と研究の資源としての家族--ポスト・ゲノムの時代に"家計経済研究. 62(未定). (2004)
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[Publications] アリス・ウェクスラー著 武藤香織, 額賀淑郎訳: "ウェクスラー家の選択-遺伝子診断と向き合った家族"新潮社. 361 (2003)
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[Publications] 武藤香織(植竹日奈他): "ALSとジェンダー(人工呼吸器をつけますか?ALS・告知・選択)"メディカ出版(所収). 182 (2004)