2004 Fiscal Year Annual Research Report
シンガポール多人種主義社会モデルの構築とそれに基く華人社会の比較社会学的再検討
Project/Area Number |
15730240
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
鍋倉 聰 滋賀大学, 経済学部, 講師 (50346011)
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Keywords | 比較社会学 / 多文化主義 / エスニシティ / コミュニティ / 団地 / アジア都市 / シンガポール:マレーシア:中国 / 華人 |
Research Abstract |
シンガポールでは、華人・マレー人・インド人・その他という複数の人種民族から成る住民の84%が、団地というエスニシティ的に無色中立な居住空間で生活を共にしている。こうしたユニークなシンガポール型の多民族社会を支えているのが、多人種主義だ。この多人種主義について、団地での現地調査を踏まえた上で、シンガポール多人種主義社会モデルを構築する。 上記目的のため、本年度はこれまで収集した資料に今年度行った現地調査を加えて、次のことを明らかにした。 多人種主義には、各人種別に分断する側面と各人種別の違いを問わない人種共通共有のシンガポール人をつくり出す側面という二面性がある。一見相反するこれら二面性が、実は多人種主義を成り立たせている。 これは政策や言説のレベルにとどまらない。団地生活のレベルでもまた、団地住民は各人種別の違いを強調する一方、団地という共通の生活の場を共有することによって、共同性を日々育んでいる。これら一見相反する二面性が、多人種主義とパラレルな形で団地における複数人種民族の共存を成り立たせているのだ。 しかし、従来のシンガポール研究は、人種別に分かれて行われてきたため、多人種主義や団地生活を成り立たせている二面性のうち、共通共有の面を十分捉えてこなかった。こうした欠点を補うべく、本研究では、団地という共通の生活の場を共有することによって日々育まれている共同性に敢えて注目し、TH団地とTJ団地を舞台にそれを注意深く丹念に解き明かした。 このように二面性から成り立つ多人種主義の仕組みを複数のレベルで明らかにすることで、今後シンガポール多人種主義社会モデルを構築し、他の華人社会の比較社会学的研究を行うための礎とした。
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