2003 Fiscal Year Annual Research Report
中国農村における村間格差と地域社会再編の社会的資源に関する基盤的研究
Project/Area Number |
15730242
|
Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
首藤 明和 兵庫教育大学, 学校教育学部, 講師 (60346294)
|
Keywords | 中国村落 / 生活構造 / 秩序ダイナミズム / 人治社会と顔役 / 人的資本と社会的資本 / 小農経済 / <包>的構造(請負構造) / 親族構造 |
Research Abstract |
中国農村の現状は、「村間格差」の言葉に象徴的である。都市経済や外国資本の恩恵に与ることができた村落と、そうしたチャンスに疎遠な村落とでは、人びとの社会移動や社会的選抜、生活の質などにおいて多大な格差が存在する。本研究の課題は、村間格差現象の背後にある中国農村社会の秩序とダイナミズムについて、フィールドワークを中心に実証的に分析することである。 これまでの調査成果の一端は、拙著『中国の人治社会』などにまとめた。従来の中国研究では、そのほとんどが「規範村」を対象にしてきたが、報告者は「非規範村」(村民自治の非実施村)を対象とした。その結果、これまでに見過ごされてきた、いくつかの新しい知見を提起することができた。 すなわち、中国農村の特徴として、(1)二者関係が基盤の「后台人」(顔役)社会であり、(2)后台人による社会規範の適用方法や人的・社会的資本が村民生活の内容を左右する村落の「個人的性格」が強く、(3)「人間関係優先主義」(Personalismus)を人びとの紐帯の基礎とするなかで、組織原理は「<包>的構造」(請負構造)に見出され、(4)父系と母系の双系的な絡み合いも后台人を結節点にして<包>的に展開することなどを指摘した。 さらに<包>的構造の特徴として、(1)経営上のリスクや生活上の面倒を請負い保証する顔役が複層的に存在し、(2)親疎の情誼を基礎にして状況主義的志向性が強く、(3)凝集性や持続性において緩やかであり、(4)階層横断的に展開し人々の社会的移動を構造的に支えている可能性が強いことなどを論述した。 今後は、(1)上記の作業仮説に基づき、(2)人的・社会的資本に基礎を置く「人治社会」の秩序・動態や社会厚生の仕組みをさらに明確化し、(3)村間格差から抜け出そうと奮闘する中国農民の姿を浮き彫りにすることで、(4)グローバル化や市場経済が浸透する中国農村での新しい地域社会形成に関する可能性を探って行きたい。
|
Research Products
(2 results)