2003 Fiscal Year Annual Research Report
既存の社会復帰モデルに適合しないアルコール依存症者の地域生活支援システムの開発
Project/Area Number |
15730259
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
橋本 美枝子 大分大学, 教育福祉科学部, 講師 (90315309)
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Keywords | アルコール依存症 / 地域生活支援 / リハビリテーション / 社会復帰施設 / ソーシャルワーク |
Research Abstract |
近年、アルコール依存症の早期段階で回復する者が増える一方、重度の慢性疾患・精神障害・嗜癖の合併、高齢などハンディを重複しているために回復困難な者が増加している。加えて就職難の状況下、再就職においても不利益を被っている。依存症者の多様化、社会的文脈の変化などを鑑みても、既存の「3ヶ月入院→通院・抗酒剤・セルフヘルプグループ参加」の社会復帰モデルを押しつけても適合しえない。この10年間で社会復帰施設が急増し、実践報告は散見されるるものの、その効果について客観的な評価はなされていない。断酒の動機づけを維持・向上し、生活構造を再構築し・重複するハンディをゆえに一層傷ついた自尊心の回復も含めたリハビリテーションのあり方を模索するためにも評価を試みる必要がある。 そこで、アルコール依存症に関する資料・文献収集、日本の飲酒文化および人間関係に関する資料・文献を収集し、これらを中心に文献研究を行った。また、利用者のニーズ・実践に関する情報を収集するとともに今後の協働関係を形成することを目的に、社会復帰施設への訪問および利用者との継続的な関わりを持つなどフィールドへの接触を試みた。訪問した施設では、個別のニーズに応じたプログラムを提供していた。ミーティング以外にも、文章や絵画など作品の制作・発表を媒介にした自己表現を取り入れていたり、内観を通して自分を見つめ、親との心の絆を回復するなど、自尊心の回復に働きかけていた。また、就労プログラムや地域住民との交流を取り入れるなど、断酒継続を基盤としながらも利用者の生活拡大に大きな比重が置かれている様子が見受けられた。さらに、家族が抱えている悩みやニーズを見出すために、断酒会や家族のためのサポートグループで参与観察を行った。これらはいずれも継続中である。
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