2004 Fiscal Year Annual Research Report
既存の社会復帰モデルに適合しないアルコール依存症者の地域生活支援システムの開発
Project/Area Number |
15730259
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
橋本 美枝子 大分大学, 教育福祉科学部, 助教授 (90315309)
|
Keywords | アルコール依存症 / 地域生活支援 / リハビリテーション / ソーシャルワーク |
Research Abstract |
16年度は、フィールドワークを通して得たデータに基づく質的研究を中心に行った。 アルコール依存症者本人に関しては、ソーシャルワーカーに対する事例の聞き取り調査を行った。高齢アルコール依存症者の事例であったが、本人が抱えている問題、実際に行った援助、援助・社会復帰の困難性、課題等について聞き取り調査を行った。また、アルコール依存症者を対象にした社会復帰施設(生活訓練施設、小規模授産施設)のソーシャルカーを対象にインタビューを行い、日常の業務、利用者に対する援助内容、援助の困難性などについて聞き取った。これらの聞き取り調査から逐語録を作成し、KJ法を用いてデータ分析し、概念図の作成を行った(分析作業は継続中である)。 アルコール依存症の家族に関しては、家族のためのサポートグループへの参与観察を継続的に行っている。アルコール依存症からの回復過程において、関係を再建する経験は、重要な他者との傷ついた関係を修復し、よりよい関係を育てていくだけでなく、ソーシャルスキルを身につけ他の人間関係においても、豊かな関係を作っていくことへと波及する。だからこそ、回復過程において関係の再建には重要な意味がある。そこで16年度は、本人と家族の関係を再建し、応答性の高い関係性を実現する条件とは何かを見出すことを目的に、本人と家族の関係性が大きく変容した事例を取り上げ、その家族の発言記録をデータとして事例研究を行った(論文)。事例分析を通して、(1)本人との関係再建に家族自身が意味を見出したこと、(2)本人に対する認識の変容(互いの違いの認識と、共有できる課題の発見)、(3)葛藤対決を経て互いが主張し合える関係性を育てたこと、(4)物理的・心理的空間の設定が、関係を再建し、応答性の高い関係作りに寄与していることが見出せた。
|
Research Products
(1 results)