Research Abstract |
児童・生徒の注意機能を客観的に査定することを目指して,集団式注意機能検査バッテリーを作成した。この検査バッテリーは,Manly, Robertson, Anderson, & Nimmo-Smith (1999)が開発したTest of Everyday Attention for Children(以下,TEA-Chと略す)を参考とし,(1)注意が単一ではなく複数の機能から構成されているとみなす理論的枠組みに立脚している点と,(2)児童・生徒に親しみやすい刺激材料や課題を使用し,検査の生態学的妥当性に配慮している2つの点を特徴としている。検査バッテリーは,4種の下位検査(地図探し,音数え,指示動作,二重課題)から成っており,それぞれ異なる注意機能(つまり,選択的注意,持続的注意,反応抑制,注意分割)の査定を意図している。小・中学生874名を対象として集団式注意機能検査を行った結果,この検査によって,小学校段階における注意機能の発達的推移を把握できること,中学生段階では発達的推移を把握できるものとそうでない下位検査があることが判明した。さらに,小学校段階では,担任教師による児童に対する不注意評定と検査結果との関係を検討したところ,教師によって注意機能に問題があると評定された場合,その注意の問題の現れ方は発達段階によって質的に異なることが示唆され,また中学校段階では,選択的注意能力の個人差は,教師の視点に基づく注意の問題の有無だけではもはや説明がつかず,教師の視点と生徒の視点との関係性を考慮せねばならないことが示された。注意の問題に対する自己認知能力が中学生になると発達し始め,しかも,その能力の発達は個人差が大きく,自己認知能力の高い生徒は自己のもつ注意の問題を適応的に利用することもあり得るため,注意の問題をもっているからといって必ずしも注意機能検査における遂行が劣ることにはならないのではないかということが示唆された。
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