2003 Fiscal Year Annual Research Report
日本的相互協調性の視点から見た青少年のアイデンティティ形成―米国青年との比較検討―
Project/Area Number |
15730296
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
杉村 和美 名古屋大学, 発達心理精神科学教育研究センター, 助教授 (20249288)
|
Keywords | 青年 / 相互協調性 / アイデンティティ / 親子関係 / 親密さ / 葛藤解決 / 文化 / 日米比較 |
Research Abstract |
本研究の目的は、アイデンティティ形成の途上に見られる青年-両親間の葛藤解決のしかたと、その背景にどのような日本的な親子関係の価値観があるのかを、相互協調性という視点を用いて明らかにすることである。特に、日本の青少年の特徴を浮き彫りにするために、同じように先進国でありながら、相互独立性という異なる価値を重んずる米国の青年と比較検討する。今年度は、葛藤解決のしかたをより明確に予測するために、我々が開発してきた「親子関係の親密さ」の価値観尺度を洗練させる作業を行った。この尺度は、欧米とは異なる日本の親子関係の特徴として指摘されてきた依存、一体感、依存、許容性、ほしいままの態度、察し、気持ち主義などを、どの程度重要と考えるかを測定するものである。 まず、関東および中部地区の大学3校に通う大学生約500名を対象に質問紙調査を実施し、探索的因子分析を行った結果、「親密」「従属」「甘え」の3つの因子が抽出された。これらの因子はいずれも親子の強い情緒的結びつきを基盤とするが、その方向性に違いがあり、親密は親子の相互的な一体化、従属は子から親への一体化、甘えは親から子への一体化を意味する。親密と従属はこれまでの研究でも指摘されてきたが、甘え因子は実証的に取り上げられることが少なく、今後の研究の発展に寄与する可能性がある。また従属についても、従来の研究では子が親に強制されたり、親を恐れて従うことが指摘されてきたが、今回抽出された従属因子は、それに加えて子が親の意向を主体的に察して喜んで従うという内容も含んでおり、欧米とは異なる従属のあり方を提言できる可能性が出てきた。次に、関東地区の中学校1校、高校2校に通う生徒を対象にして、本尺度の中高生への適用可能性を検討する質問紙調査を実施し、現在分析中である。その後、最終的に構成された尺度を英訳し、米国青年への使用可能性を検討した後に、本調査を実施する予定である。
|
-
[Publications] 山崎瑞紀, 竹尾和子, 杉村和美: "「親子関係の親密さ」尺度における妥当性の検討:中学生・高校生・大学生を対象にして"日本心理学会第67回大会発表論文集. 1064 (2003)
-
[Publications] 杉村和美, 山崎瑞紀, 竹尾和子: "日本青年における「親子関係の親密さ」の特徴:精神的健康度との関連から"日本心理学会第67回大会発表論文集. 1065 (2003)
-
[Publications] 竹尾和子, 山崎瑞紀, 杉村和美: "青年-両親間の不一致の解決過程:中学生、高校生、大学生間の発達差の検討"日本心理学会第67回大会発表論文集. 1066 (2003)
-
[Publications] Yamazaki, M., Takeo, K., Sugimura, K.: "Adolescent-parent closeness in Japan : Its structure and scale development."Poster presented at the 10th Biennial Meetings of the Society for Research on Adolescence. 付録. (2004)