2005 Fiscal Year Annual Research Report
身振りと音声の同期メカニズムの解明:健聴児と聴覚障害児の比較から
Project/Area Number |
15730307
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Research Institution | Ibaraki Christian University |
Principal Investigator |
江尻 桂子 茨城キリスト教大学, 生活科学部, 助教授 (80320620)
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Keywords | 乳児 / 発声 / 指さし / 聴覚障害 / 聾児 / 聴覚障害 / コミュニケーション / 音声相互作用 |
Research Abstract |
本研究では、これまで対象とされてこなかった聴覚障害児を対象に、指さしと発声との随伴関係を調べ、これを聴児のデータと比較した。研究対象となったのは、次の3つのグループである。 ・聴覚障害者の親をもつ聴覚障害児2名(DD1,DD2 : Deaf children of Deaf parents) ・聴者の親をもつ聴覚障害児1名(DH1 : Deaf children of Hearing parents) ・聴覚障害者の親をもつ聴児2名(HD1,HD2 : Hearing children of Deaf parents)。 各グループの子どもたちについて、月齢11ヶ月から16ヶ月の各月40-60分の録画ビデオデータを分析対象とし、時間軸上のどこでどのような発声、ジェスチャーが起こったのかをコーディングした。そして、各ジェスチャー(指さし含む)に音声が伴ったかどうかを詳細に見た。 その結果、まず、指さしの生起頻度については、各グループのあいだに顕著な相違はなかった。次に、本研究で着目する、指さしと発声との同期的関係については、第1に、聴者の親をもつ聴覚障害児においては、指さしに頻繁に発声が伴っていた。指さしを発声の同期の程度は、先行研究で示された、聴者の親をもつ聴児における指さしに音声が伴う割合と同程度であった。第2に、聴覚障害者の親をもつ聴覚障害児および、聴覚障害者の親を持つ聴児においては、上記のグループに比べて、指さしに発声が伴う頻度は低かった。以上の結果から、生後11ヶ月から16ヶ月の段階の指さしと発声の同期的関係を見る限り、その子どもの親が聴者であるか聴覚障害者であるかという要因が強く関わっていることが示唆された。これらの結果は、指さしと音声との同期現象の成立には、これまで指摘されてきたような生得的な結びつきだけではなく、社会的フィードバックの有無が関与していることを示唆するものといえる。
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Research Products
(3 results)