2004 Fiscal Year Annual Research Report
初期アルツハイマー病に対する心理リハビリテーションに関する研究
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15730310
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
松田 修 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (60282787)
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Keywords | アルツハイマー病 / 認知リハビリテーション / 記憶障害 / 認知障害 / 心理リハビリテーション / リハビリテーション / 非薬物療法 / 心理療法 |
Research Abstract |
本研究の目的は、病初期のAlzheimer病(AD)患者を対象に、記憶障害に焦点を当てたリハビリテーションプログラムを開発し、その短期的および長期的効果を検討することである。 対象は、NINCDS-ADRDAのprobable ADの診断基準を満たす、塩酸ドネペチル服薬中の患者と、その主たる家族介護者である。日本語版COGNISTATをはじめとする神経心理学的検査から得た認知機能プロフィールに基づいて、患者の保持された機能と障害された機能を明確にし、保持された機能によって障害された機能の代償が行われることを意図した介入を行った。介入は、内的代償法と外的代償法に大別された。前者は残存機能の維持を目指した認知訓練課題の実施で、後者は環境調整や外的補助手段の導入である。家族には外的補助手段の管理や記憶障害の対応に関する心理教育を行った。 短期的な効果については、介入群(15人)と非介入群(15人)のMini-Mental State Examination(MMSE)の得点の成績を、2(介入群・非介入群)×2(事前・事後)の分散分析で比較した。その結果、有意な交互作用が認められ、介入群にはMMSE得点に大きな変化はなかったが、非介入群にはMMSE得点の成績低下が認められた。リハビリテーション開始後、3年を経過した患者に関する縦断的データに基づいて、病初期に導入するリハビリテーションの長期的効果について症例検討を行った。56歳で発症したこの症例は、リハビリテーションを開始する約1年半前から塩酸ドネペチルを服用していた。リハビリテーションでは、言語性記憶課題による内的代償と、外的補助手段の導入による外的代償を試みた。 その結果、リハビリテーション開始2ヶ月後、この症例のWechsler Memory Scale-Revisedの言語性記憶指数は、介入前の水準を20ポイントほど上昇した。リハビリテーション開始後6ヶ月をピークに成績は徐々に低下したものの、開始後40ヶ月の時点でも、薬物療法のみの時期の水準を上まわっていた。 これらの結果から、病初期のアルツハイマー病に対する心理リハビリテーションが、アルツハイマー病に対する新たな治療的取り組みのひとつとなりうる可能性が示唆された。
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