Research Abstract |
本研究の目的は,防衛的悲観主義に関する日本人への適用可能性について検討をおこなうことである.本年度は,(1)調査研究として,前年度に作成した質問紙の妥当性・信頼性に関する再検討をおこない,(2)実験研究として,これまでに作成した質問紙を用いて防衛的悲観主義傾向の強い学生を抽出し,生理的指標を用いた実験的検討をおこなった. (1)調査研究では,延べ人数計1631名の調査協力者を対象に,4回にわたって調査を実施した.統計パッケージSPSS14.0およびAMOS5.0を用いて因子分析やクラスター分析をおこなった.その結果,高い信頼性と妥当性を備えている防衛的悲観主義尺度(Japanese Defensive Pessimism Inventory)が作成された. (2)実験研究では,米国で防衛的悲観主義を実証したNorem & Illingworth(1993)に基づいた実験を実施した.まず,本研究で作成された防衛的悲観主義尺度によって,618名の調査協力者を(1)防衛的悲観主義群,(2)方略的楽観主義群,(3)統制群,および,(4)真の悲観主義群,の4群に分類した.各群の実験参加者を思考条件(これから実施する暗算課題の結果や予想を考えさせ,防衛的悲観主義方略への導入を図る)および非思考条件(妨害課題によって暗算課題から注意をそらす)に割り当てる実験操作をおこなった後,3種類の暗算課題を実施した.また,暗算課題の前・中・後に唾液を採取し,ストレス免疫の測定をおこなった.従属変数は,課題の遂行成績,および,唾液中のアミラーゼ濃度である.なお,実験参加について同意の得られた254名のうち,現在94名について個別実験を実施中であり,これまでに得られたデータについて現在統計処理中である.
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