2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15730318
|
Research Institution | Sapporo Gakuin University |
Principal Investigator |
岩壁 茂 札幌学院大学, 人文学部, 助教授 (10326522)
|
Keywords | 臨床心理学 / 心理療法過程 / 作業同盟 / 治療関係 / 早期終結 / 質的研究 / 臨床訓練 / 初回面接 |
Research Abstract |
本研究は、心理療法の初期面接に焦点を当てることによって、クライエントとセラピストの協力関係を意味する作業同盟がどのように確立されるのか明らかにすることを目的とする。本年度は、初回面接におけるクライエントの主観的体験およびセラピストの思考過程を質的方法によって検討した。まず、初回面接終了後に、クライエントに対して半構造化インタビューを実施し、初回面接の体験について語ってもらった。10事例という少ない数のクライエントを対象とすることにより、細かな記述を行った。インタビューの逐語データをグラウンデッドセオリーを用いて分析した結果、初回面接における肯定的体験として、活力、自信、希望を取り戻すとともに着実な一歩を踏み出したという実感をもつ体験を意味する「心力回復の一歩」という概念が生成された。また、否定的な体験では、達成惑が得られず、当面の不安がぬぐえない{保留}体験という概念が生成された。 現在20人のセラピストに対して行った半構造化面接も同様のグラウンデッドセオリーを用いて分析した。セラピストの思考過程は、臨床経験の有無と大きく関係しており、予期せぬ出来事をきっかけとして両者が大きく異なった。経験豊富なセラピストにとって、予想していなかった情報ややりとりは、クライエントについて学び、自らの仮説を修正し、治療関係を築く機会としてとらえていた。もう一方で初心者セラピストは、このような事態において起こると動揺し、柔軟に対処することができずに、自分の力量のなさを責める傾向にあった。今後は、より多くのクライエントとセラピストからデータを集めるだけでなく、同じクライエントに数度インタビューすることにより、セラピストに対する心象の変化に焦点を当てたい。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] Fitzpatrick, M., Stalikas, A., Iwakabe, S.: "Perspective divergence in the working alliance."Psychotherapy Research. 未定. (2004)
-
[Publications] Gazzola, N., Iwakabe, S., Stalikas, A.: "Counselor interpretations and the occurrence of in-session client change moment in non-dynamic psychotherapies."Counselling Psychology Quarterly. 16. 81-94 (2003)
-
[Publications] 岩壁 茂: "面接中の微少的変容過程を示す指標"札幌学院大学心理臨床センター紀要. 3. 1-15 (2003)
-
[Publications] 岩壁 茂: "クライエントの初回面接の体験-札幌学院大学心理臨床センターにおける実践的研究の取り組み-"札幌学院大学心理臨床センター紀要. 4(未定). (2004)