2003 Fiscal Year Annual Research Report
眼球運動時における視覚・運動情報統合過程の時間的特性の解明
Project/Area Number |
15730336
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
十河 宏行 京都大学, 文学研究科, 助手 (90359795)
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Keywords | 視野の安定化 / 視覚運動統合 / サッカード |
Research Abstract |
1.心理実験によるアプローチの成果 近年の研究より、サッカード実行時における視覚・運動情報の統合過程を考える上で、形状知覚などの処理過程を考慮する必要性が示唆されている(Matsumiya & Uchikawa,2001,Vision Research 41,3039-3050)。本年度はこの問題について、Kanizsa型の主観的図形がサッカード実行直前に提示されたときの知覚を実験によって検討した。その結果、Kanizsa型の主観的図形はサッカードに伴う視野圧縮錯視(Ross et al. 1997, Nature 386, 598-601)の影響を受けることが明らかになった。先に挙げたMatsumiya & Uchikawa(2001)より、近接性によって知覚的に統合された図形は視野圧縮錯視の影響を受けないことが知られているので、今回の結果と合わせて視野圧縮錯視が一次視覚野より後、LO Complexより前の段階で起こっている可能性が示唆される。以上の実験結果をまとめた論文を現在投稿中である。また、日本心理学会第68回大会(2004年9月)でも発表を予定している。 2.理論的アプローチの成果 様々な心理実験により、中枢神経系における眼球位置表現がサッカード実行時に実際の眼球運動にローパスフィルタをかけたようにゆっくりと変化することが知られている。しかし、なぜこのような時間特性を示すのかという理由は明らかになっていない。この問題について、サッカードの潜時と持続時間にばらつきがある状況での眼球位置の最適推定という観点から実験データの説明を試みた。現在、サッカードのターゲットオンセットからの潜時、および頭頂葉の神経細胞のサッカードに対する応答潜時の標準偏差のデータに基づいたシミュレーションを実行中である。
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