2005 Fiscal Year Annual Research Report
運動視差と両眼視差による奥行き処理における再帰的過程
Project/Area Number |
15730338
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Research Institution | Saitama Institute of Technology |
Principal Investigator |
大塚 聡子 埼玉工業大学, 人間社会学部, 助教授 (90348293)
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Keywords | 奥行き知覚 / 両眼視差 / 台座視差 / 時間特性 / 物体間の奥行き / 物体内の奥行き |
Research Abstract |
視差情報の再帰的過程について調べるために,複数の視差が入れ子構造をもつような刺激について,それぞれの視差による奥行き知覚成立の時間を検討した.両眼視差の相互修飾現象,すなわちある対象の空間定位に寄与する両眼視差(周辺視差)が,その対象内の両眼視差(標的視差)による奥行き知覚に影響するという現象を利用し,2つの視差による奥行き知覚の成立時間を調べた.刺激全体の提示時間を変化させて見えを測定したところ,周辺視差による奥行きがより早く成立し,続いて標的視差による奥行きが修飾されることが示された.この時間特性を詳細に調べるため,相互修飾現象に類似した状況として,両眼視差による台座視差とテスト視差を含む刺激を使用して,2つの視差による奥行き弁別時間を恒常法により測定した.実験の結果,台座視差に比較すると,テスト視差による奥行き弁別時間が長かった.ただしこの場合,テスト視差の大きさが台座視差の弁別時間にわずかながら影響するという結果も得られた.以上の結果は,両眼視差情報処理において再帰的過程が存在することのほか,2つの視差情報が空間的に相互作用することを示唆する.そこで,相互修飾現象が視差情報の空間的相互作用に基づくものであるかどうかを検討するために,周辺視差と標的視差の視差量を独立に操作し,奥行き知覚への影響を調べた.その結果,周辺視差量は標的視差による奥行き知覚に強く影響するが,標的視差量の操作は周辺視差による奥行き知覚に影響しなかった.この結果は,2つの視差情報の単純な空間的相互作用で説明することは困難である.それよりも,周辺視差に関する計算結果が標的視差の計算に影響することを示しており,視差計算の再帰的な過程が存在することに一致すると考えられる.
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