2004 Fiscal Year Annual Research Report
発語過程において有声・無声が影響を及ぼすしくみと処理のレベル:音韻・音声・調音
Project/Area Number |
15730345
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
呉田 陽一 財団法人東京都高齢者研究, 福祉振興財団・東京都老人総合研究所, 研究員 (60321874)
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Keywords | 言語心理学 / 音韻 / 音声 |
Research Abstract |
これまで研究者は、日本語話者の音韻符号化過程のレベルにはモーラ単位(子音+母音)のユニットが必要であることを明らかにした。昨年度は音素レベルの音韻を強く意識させる手続きを導入したところ、日本語話者においても欧米言語話者と同様に音素レベルのプライミングに促進効果が現れた。しかし、プライムされた語頭子音は全て有声音であったため、この結果が有声・無声を問わず子音全般に一般化出来るものなのかが課題として残されていた。 本年度は、有声子音で始まる単語のプライミング効果を直接検討する前に、3モーラからなる無意味単語刺激(合計80語)を発話させ、その潜時を従属変数に重回帰分析を行った。独立変数には刺激語の隣接語数などの属性に加え、頭子音の音声学的特長(調音様式、調音位置、有声・無声)を使用した。被験者は、大学生・大学院生を中心にした若齢者群20名、65歳〜75歳の前期高齢者群18名、及び75歳〜85歳の後期高齢者群19名であった。実験ではCRT画面中央に刺激を提示し、被験者には出来るだけ速く、正確に、そして流暢に発話するように教示した。 その結果、語頭が有声子音よりも無声子音の発話潜時が有意に速くなった。この結果は、発達において無声音が有声音よりも獲得され易い事実、すなわち、無声音が無標(unmarked)で有声音が有標(marked)であると考える理論と符合する。
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