2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15730365
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
小國 喜弘 東京都立大学, 人文学部, 助教授 (60317617)
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Keywords | 国民教育 / ナショナリズム / 教育史 / 沖縄 |
Research Abstract |
今年度は、年度前半と後半において、次のような研究活動を展開した。 まず年度前半においては、沖縄における戦後教育史を教育実践の側面から再検討することを通して、国民的歴史学運動において提起された下からのナショナリズムが沖縄の歴史的展開の中でどのように教育場面において見受けられたのかを明らかにしようとした。その結果として、戦後における下からのナショナリズムの展開に際して、戦前、特に戦時下における「本土」を母と見なし、「沖縄」を子どもと見なすという両地をめぐる母子表象が戦後において再生産されることになったことを明らかにした。ナショナリズムを促す動因としてのメタファーの存在に注目することの必要性について検討を進めた。 沖縄での教育とナショナリズムを検討するにあたり、その中心点にあったのは教育基本法問題であった。そこから沖縄・本土での教育基本法問題と教育運動との関係について検討を行った。検討の結果として明らかにし得たことは、教育基本法においては日本文正文と英語訳において教育が誰に責任を負うのかをめぐって大きな違いがあるということであった。すなわち日本語版では、国民全体に責任を負うことが明文化され、英語訳においてはコミュニティ全体に対して責任を負うべきことが明文化されていた。戦後における教育基本法の擁護運動は、民間教育運動における下からのナショナリズムの一表現形であり、その際、ナショナルな問題がコミュニティの問題に対して優先されていったことを明らかにした。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 小国喜弘: "方言教育の戦後-無着成恭の「山びこ学校」を手がかりとして"ことばと社会. 7. 23 (2003)
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[Publications] 小国喜弘: "戦後沖縄と国民教育-反復される記憶-"アジア遊学. 53. 11 (2003)
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[Publications] 小国喜弘: "もう一つの教育基本法-教師たちの戦後責任とナショナリズム-"現代思想. 12 (2004)