2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15730365
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
小国 喜弘 東京都立大学, 人文学部, 助教授 (60317617)
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Keywords | 教育学 / 国民国家 / 民俗学 / 社会科 / 郷土教育 / 生活綴方 / 授業 |
Research Abstract |
本年度は、国民的歴史学運動の継承過程として、戦後の社会科教育、生活綴方教育の教育実践の分析と、それらの実践的基盤として、改めて戦前期の郷土教育、生活綴方教育に焦点を当てると共に、現代の教育問題にも光を当てようと試みた。 戦前期の教育については、郷土教育と生活綴方教育について、改めて民俗学との関わりを整理することとした。国民的歴史学運動は、庶民の歴史を創出しようとする運動であり、その基盤を辿るならば、村々において子ども達に歴史を調べさせ、綴らせることで歴史像の構築を下から試みようとした郷土教育や生活綴方教育実践に行き当たるのであり、それらの教育には当時、新たな社会科学として成立しつつあった民俗学が実践のヒントを与えていたのである。しかし、下からの歴史像構築の試みは、国民国家の構成員にとっての正史(いわば「国民の歴史」)を自主的な取り組みとして(時に戦時下における正統な国史への批判意識を持っていたとしても)内面化する試みとなっていたことを明らかにした。 戦後、象徴天皇制への移行の中で、国民を主人公とした歴史像が求められた。新たな歴史像の構築に積極的な役割を果たしたのが国民的歴史学運動であった。そこでは、当事者たちには必ずしも意識されていなかったものの、1930年代の柳田国男の民俗学の問題提起と共通するものがあった。 本年度の研究では、いわば1930年代に構築された、「郷土」の歴史像の構築を手がかりとして、国民の歴史を内面化させようとする技法は、その後も基本的に機能し続けており、昨今の教育改革における愛国心涵養を目指す教育においても使用されていることを明らかにした。
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Research Products
(5 results)