2003 Fiscal Year Annual Research Report
北東北地方における昭和戦前期郷土教育実践に関する調査及び研究
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15730386
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
土屋 直人 岩手大学, 教育学部, 講師 (10318751)
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Keywords | 郷土教育 / 公民教育 / 生活教育 / 遠野教育 / 生活綴方 / 北方教育 / 社会科 / カリキュラム |
Research Abstract |
本研究課題への着手初年度である本年度は、先ず筆者の勤務する岩手県下に焦点を当て、その中でも特に、昭和初期の遠野地方における一小学校の実践を対象とした。そこでは、体系化された郷土教育方針が示されていた他、北方教育、生活綴方運動の性格を色濃くする生活教育実践があった。 岩手県上閉伊郡遠野尋常高等小学校は、1938(昭和13)年10月20日に開催した県下への自主的な学校公開から約2年後、1940(昭和15)年12月、全526頁からなる謄写版の大著『皇紀二千六百年記念 皇民錬成を目ざす遠野教育の實態』を発行した。本年度の前半は、同書をいわゆる「遠野教育」の実践理念の詳細を実証的に明らかにする第一次資料と位置付け、同書の基礎論にあたる「第一篇 學校経営基礎編」部分を検討し、その実践の意義について考察した。同箇所には、「郷土を立脚点と」する学校経営方針、「子供の生活の全体性」「児童の自治と社会生活」を重んじる学校・学級経営への信念が記されており、その根底には大正自由教育、北方教育運動等の流れを汲む「生活」教育、「綜合教育」の主張があった(拙稿「昭和戦前期『遠野教育』の実践理念について-遠野尋常高等小學校編『皇民錬成を目ざす遠野教育の實態』の検討を中心に」『岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要』第2号)。 また、これまでの遠野における聞き取り調査の過程と結果の一端を報告し、昭和戦前期「遠野教育」の生活教育としての特質を論じた(拙稿「昭和戦前期・遠野の生活教育-聞き取りの中から」日本生活教育連盟機関誌『生活教育』第661号)。そこでは、昭和15年前後に「遠野教育」を受けた方々の教育体験、当時の遠野尋常高等小学校の教師らの横顔や学校の様子などの回想等を紹介し、前述の史資料研究の成果をふまえつつその実践の歴史的意義を確認した。 他方、本年度の後半は、1940(昭和15)年、紀元二千六百年記念として、岩手県教育会が、県下の各尋常高等小学校の郷土地誌調査の結果を集成した一連の『郷土教育資料』を検討した。それらの数はおよそ五百数十冊に及ぶが、目下、岩手県立図書館、及び各市町村立図書館に所蔵するそれら各書の書誌や内容構成などを、分類整理・分析している過程であり、16年度にはその成果の公表が見込まれる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 土屋直人: "昭和戦前期「遠野教育」の実践理念について-遠野尋常高等小學校編「皇民錬成を目ざす遠野教育の實態』の検討を中心に"岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要. 第2号. 47-64 (2003)
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[Publications] 土屋直人: "昭和戦前期・遠野の生活教育-聞き取りの中から"生活教育(日本生活教育連盟機関誌). 第661号. 40-43 (2003)