Research Abstract |
本研究は,音楽的イメージの育成プログラムと評価システムを開発し,3年間をかけて,その有効性を実証していこうとするものである。 初年度にあたる平成15年度には,まず,音楽教育学および音楽心理学の文献調査と情報収集を行い,音楽的イメージの働きと形成過程について,主に知覚との関わりから明らかにした。次に,小学校音楽科とピアノ・レッスンにおける活動を参観し,音楽的イメージが生起していると思われる場面を,ビデオと文章にて記録した。また,自らの演奏活動を通して得られた知見を,内省的報告によって記述した。その結果,音楽的イメージが生き生きと働くためには,(1)内在化された共振に基づいていること,(2)知覚からも,楽器操作の動作からも,独立して働いていること,(3)楽曲の生成構造に則ったまとまりをもっていること,を必要とすることが分かった。そして,実践に携わる研究者から指導・助言を受けるとともに,大学生を対象とした予備的実験を行い,仮説的枠組みに修正・変更を加えた。以上の研究成果を,報告書「音楽的イメージの評価システム(試案)-その理論的枠組み-」としてまとめ,(1)沈黙を活用した演奏,(2)ボディ・パーカッションとヴォイス・パーカッション,(3)即興演奏,(4)題名づけ,の4点から,評価システムの開発に向けた提案を行った。現在は,この報告書を研究協力者である学校教員とレスナーに配布し,実践の中で試行していただいている段階である。 次年度には,いまだ断続的な取り扱いしかなされていない音楽的イメージの育成プログラムを,継続的な使用に堪えるものへと改善するべく,体系化に向けて,更なるデータを蓄積していきたい。
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