Research Abstract |
最終年度にあたる平成17年度は,前年度までの研究成果を国内外の学会等において発表すること,および育成プログラムと評価システムを,学校現場の教育実践において試行していただくこと,の2点を中心に,研究活動を行った。 まず,7月にワシントン大学で開催された《The 5^<th> Asia-Pacific Symposium on Music Education Research》では,日本人のピアノ学習者を対象とした指導事例に基づいて,音楽的イメージがどのように獲得されていくのか,そのプロセスについて報告を行った。また,11月には《日本ダルクローズ音楽教育学会 第5回研究大会》において,大学生を対象としたハンド・クラッピングの実験とその結果について発表した。このほか,音楽童話を用いて育成プログラムと評価システムについての具体的な提案を行っている。さらに,高等学校教諭の協力を得て,世界の「声の技芸」を介した音楽的イメージがどのように形成されるのか,その実際について報告した。 3年間にわたる本研究の成果は,次の4点に集約される,(1)「音楽的イメージ」にかかわる内容を整理し,その本質と形成過程に関する理論的枠組みを提出することができたこと,(2)「音楽的イメージの育成プログラム」を開発し,ピアノ学習者を対象としてその有効性を確認したこと,(3)ハンド・クラッピングという単純な音楽活動から,音楽的イメージと知覚の働きを知ることができるということ,また「学習者のつまずき」の場面を拾い上げることが,その発達過程を明らかにする上で有効な方法であるということを提案したこと,(4)評定尺度を用いた「音楽的イメージの評価システム」を開発し,高等学校においてその有効性を確認したこと。これらの概要と今後の課題を1冊の報告書にまとめ,この間に発表された5本の論文を再録した。
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