2003 Fiscal Year Annual Research Report
保型的ポアンカレ級数とレゾルベント型跡公式の整数論
Project/Area Number |
15740003
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
権 寧魯 九州大学, 大学院・数理学研究院, 助教授 (30302508)
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Keywords | セルバーグゼータ関数 / 高次セルバーグゼータ関数 / タイヒミュラー空間 / 保型形式 / 周期 / 変分型跡公式 |
Research Abstract |
セルバーグゼータ関数のタイヒミュラー空間における第一変分について研究した.Xをタイプ(g,n)のリーマン面,ΓをXの基本群とする.Γは一次分数変換で上半平面H上不連続に作用し,その作用による商空間はもとのリーマン面と同一視される.リーマン面Xのセルバーグゼータ関数は離散群Γの素な双曲共役類全体にわたるオイラー積で定義され,複素数平面全体に有理型関数に解析接続されて関数等式をみたす.T_{g,n}をタイプ(g,n)のリーマン面のなすタイヒミュラー空間で基点をXとする.リーマン面Xのセルバーグゼータ関数は,絶対収束域内の複素数を固定すると複素多様体T_{g,n}上の連続関数になることが知られている. セルバーグゼータ関数のタイヒミュラー空間における変分問題とは,複素多様体T_{g,n}の基点における接空間の元にたいして,セルバーグゼータ関数の接ベクトル方向の微分を考察することである.今回得られた第1の結果はセルバーグゼータ関数の対数の第一変分の明示公式で,接ベクトルに対応する保型形式の周期,局所セルバーグゼータ関数,局所高次セルバーグゼータ関数で記述され,ある右半平面で絶対収束する.当然,セルバーグゼータ関数の第一変分の複素関数としての解析的性質にも興味が持たれる.もとのセルバーグゼータ同様,(a)複素数平面全体に解析接続されるか,(b)関数等式をもつか,(c)リーマン予想の類似をみたすか等が問題となる.第2の結果はXがコンパクトリーマン面という仮定のもと,上記(a)から(c)が正しいことを証明した.証明は"変分型跡公式"を使ってなされる.通常のセルバーグ跡公式の幾何学的辺に比較して,タイヒミュラー空間T_{g,n}上の"定数関数"である項(例えば,単位元からの寄与,プランシェレルの公式で記述されるなど)が消えるなど,我々の変分型跡公式はより本質的部分を抽出した跡公式ともいえる.
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Research Products
(1 results)