Research Abstract |
90年代末,J.Herzogとその協力者たちは,外積代数上の有限生成次数付加群の極小自由分解について,詳細な研究を行った.(研究動機の一つは,組合せ論的可換代数からのもの.)中でも顕著な結果は,T.Romerによる,ある種の双対定理である.私は,「Bernstein-Gel'fand(BGG)対応」を用いて,全く異なった視点から,これらを捉え直し,精密化・一般化した、BGG対応は,n-変数多項式環S上の有限生成次数付加群の有界な導来圏と,Sの「Koszul双対」である外積代数E上の同様の圏との間に,圏同値を与えるものである.これを用いると,Romerの双対定理は,S上の有限生成次数付加群の複体の間の双対定理に「翻訳」されるが,こちらは,Sが所謂「Auslander条件」を充たすと言う事実(この条件は本来,非可換Gorenstein環に関する概念だが,可換なGorenstein環では,常に成立している)から,容易に従うのである.また,BGG対応はZ^n -graded加群の間でも成立するので,Romerの双対定理もZ^n -gradedの文脈で成立することが分かる.この形こそ,Romerが本来証明したかったものだと思われるが,彼らの論法では,上手くいかなかった.この結果は,諭文"BGG correspondence and Romer's theorem on an exterior algebra"に纏めたが,雑誌Algebras and Representation Theoryに掲載されることが決定している. 上の結果は,Auslandedr正則なKoszul環(非可換環代数幾何学では,この種の環が,よく研究されている),及び,そのKoszul双対環で成立していると考えるのが自然である.来年度以降の研究課題の一つとしたい. また,前年度以前に投稿していた2つの論文も,今年度に出版された(次項参照).
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