Research Abstract |
本年度の研究では,当該課題の主要な研究対象である,トーリック環,トーリックイデアルを中心に,整数計画問題に関連する,compressed多面体,分割表の解析に関連するトーリック環,符号理論へのグレブナー基底への応用に現れるイデアルについて研究した。以下,それぞれの詳細について述べる。第一に,トーリック環,トーリックイデアルについて,昨年度の研究成果を発展させ,compressed(すなわち,任意の逆辞書式三角形分割が単模)な整凸多面体がspecial simplexを持つことと,付随するトーリック環がGorensteinであることは同値であることを証明した。与えられた凸多面体の頂点を頂点集合とする単体が,special simplexであるとは,元の凸多面体の任意のファセットが,その単体の頂点集合を,1頂点を除いて全て含むときにいう。系として,Christos Athanasiadisの定理「compressedな整凸多面体にspecial simplexが存在するならば,そのトーリック環のh列はある単体的凸多面体のh列と一致する」を使うと,compressedな多面体に付随するGorensteinトーリック環のh列は単峰数列であることが分かる。(なお,この結果はAthanasiadis氏も独立に得ている。)第二に,統計学における分割表の解析に用いられるトーリック環について研究し,それらの正規性や単模性について結果を得た。また,第三に,符号理論へのグレブナー基底による応用に現れるヒルベルトイデアルについて,特に交代群のヒルベルトイデアルの普遍グレブナー基底を求めた。系として,Larry Smithが証明した,対称群のヒルベルトイデアルと交代群のヒルベルトイデアルが一致するための必要十分条件(体の標数が交代群の位数を割り切る)が得られる。
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