2003 Fiscal Year Annual Research Report
合金の相転移現象を記述する江口―沖―松村方程式系の解の漸近挙動に関する研究
Project/Area Number |
15740113
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
黒木場 正城 福岡大学, 理学部, 助手 (60291837)
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Keywords | 江口-沖-松村方程式系 / 合金の相転移 / 漸近挙動 / アトラクター / Inertial Set / Allen-Cahn方程式 / Cahn-Hilliard方程式 |
Research Abstract |
合金の中でおこる相転移現象は異種の原子の配列に規則性が生じる規則-不規則転移と、同じ原子同士で凝集しようとすることによって起こる組成相分離がある。これまではこれらの現象を単独の現象と考えて、Allen-Cahn方程式とCahn-Hilliard方程式で表現し、数学的な研究がそれぞれにおこなわれてきた。 研究代表者は、江口-沖-松村方程式系が原子の規則化が要因となって相分離が時間発展する現象を記述することに興味を持ち、谷温之教授(慶応義塾大学理工学部)、田中尚人助教授(福岡大学理学部)と共同で研究を行い、エネルギー法を使って、江口-沖-松村方程式系のNeumann問題に対する解の存在と一意性を示した。 現在、このような他の物理現象と相分離現象を考慮した連立Cahn-Hilliard方程式系の研究が盛んに行われているが、例えば解の漸近挙動については、D.Brochet、D.HilhorstとA.Novick-CohenのAllen-Cahn/cahn-Hilliard方程式系についての解の極限軌道とInertial Setの研究(1994年)や、W.ShenとS.ZhengのCahn-Hilliard方程式と温度の効果を連立させた方程式系に対する解の極大極限軌道(Maximal Attractor)の研究(2002年)といった研究結果が挙げられる。 本研究では、江口-沖-松村方程式系に対する一連の研究結果が得られていないことから、谷教授、田中助教授と共同で、エネルギー法を使ってSobolev空間上でabsorbing setが存在することを示し、解の時間大域的極限軌道の存在を証明した。さらに江口-沖-松村方程式系のsemigroupが、squeezing propertyを満たし、またLipshitz連続であることから、Inertial Setが存在する事を示し、その性質を解明した。 今後は、江口-沖-松村方程式系の解の漸近挙動についてさらに詳しい情報を得るために、これらの結果を参考に、定常解の安定性について解析を行いたい。
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Research Products
(1 results)