2003 Fiscal Year Annual Research Report
陽子タギング法による核内中性子からのファイ中間子生成過程の研究
Project/Area Number |
15740154
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
堀田 智明 大阪大学, 核物理研究センター, 助手 (30332745)
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Keywords | ファイ中間子 / 光生成 / 中性子 / ガンマ線 |
Research Abstract |
本研究は、偏極高エネルギーガンマ線ビームを用いて重水素を標的としたファイ中間子反応を精密に測定する。特にファイ中間子生成反応に際して同時に標的から放出される反跳陽子を検出する実験を行い、重水素を構成する陽子と中性子の二種類の核子のうちどちらが反応に関与したかを識別することで、中間子交換過程のアイソスピン構造に関する情報を得るのが本研究の特徴である。この実験のためには、反跳陽子の検出器を整備と、高統計精度を得るためのビーム強度の増加が必要であり、今年度は主にビーム強度増加のために、ビームエネルギー標識化装置の改良を行った。本実験で用いるガンマ線ビームは、大型放射光施設SPring-8の8GeV蓄積電子に、レーザー光子を衝突させて生成している。ビームのエネルギーは、衝突後の電子の運動量をタギング検出器と呼ばれる検出器で測定することによって間接的に求められている。これまで、タギング検出器はシリコンストリップ検出器によって電磁石を通過した後の散乱電子の位置を測定することで電子の運動量を求めていたが、検出器の時間応答が遅いため、対応できるビーム強度には限界があった。今回、電子の位置検出器としてシンチレーションファイバーを束ねたものを用いる新タギング装置を開発し、従来の装置と置き換えた。改良前のタギング検出器では、現在のビーム強度(毎秒約100万photon/秒)において、その内約20%の光子は、タギング検出器が正しくエネルギーを決定出来なかったために解析に使う事ができない(無駄な)光子となっていたが、今回の改良によって、これを数%以下にすることに成功し、また、レーザー系の改良などにより、ビーム強度が2倍、3倍になった場合でも対応できる検出器となった。反跳陽子検出器は、他の実験にも使用可能な大立体角の検出装置を共同で整備しており、平成16年度に、新タギング検出器(すでに稼動中)と合わせて重水素標的からのファイ中間子生成実験を行う予定である。
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