2005 Fiscal Year Annual Research Report
スピン自由度をもつ量子ホール系の密度行列繰り込み群による研究
Project/Area Number |
15740177
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
柴田 尚和 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (40302385)
|
Keywords | 量子ホール系 / スピン / 2層量子ホール系 / 強磁場 / 密度行列 / 繰り込み群 / 二次元電子系 / 基底状態 |
Research Abstract |
スピン自由度と等価な擬スピン自由度をもつ2層量子ホール系の基底状態を、これまでの研究で開発したスピン自由度を含む2次元量子多体系に最適化した密度行列繰り込み群を用いて調べた。 2層量子ホール系は上下2層の電子を上向き、下向きの2つの擬スピン自由度で表現することでスピン自由度をもつ量子ホール系として取り扱うことができる。この系では2層合計の占有率が1となる場合において、2つの電子面に電流を反平行に流したときにホール抵抗が消失したり、2層間のトンネルコンダクタンスが低温で急激に増加するという特異な現象が実験的に発見されている。そのため、特に近年理論的興味を集めているが、2次元の量子多体問題を精密に解くことが非常に困難であることから、その現象の理論的解明はこれまで十分になされてこなかった。 今回開発した密度行列繰り込み群の方法では、従来の計算法の限界を大きく超える磁気長の6倍程度の距離までの電子状態を精密に計算することが可能であり、この系の理論的電子状態と実験で明らかになっている特異な電気的輸送特性との関係を十分な精度で調べることが可能である。 この計算法によって得られた電子間の相関関数を解析した結果、特異な輸送現象が現れる領域で励起子間に巨視的スケールの秩序が形成されていることが分かった。この秩序は2層間の距離が磁気長の1.6倍程度のところで連続的に消失し、励起子凝縮相から独立2層系への連続的な転移が現れることが明らかになった。この解析結果は、これまでの実験結果を理論的に説明するものである.
|
Research Products
(1 results)