2003 Fiscal Year Annual Research Report
金属における光励起電子及びコヒーレントフォノンのフェムト秒超高速分光
Project/Area Number |
15740188
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
長谷 宗明 独立行政法人物質・材料研究機構, 材料研究所, 研究員 (40354211)
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Keywords | フェムト秒 / コヒーレントフォノン / 電子 / 金属 / 反射率変化 / ポンプープローブ法 |
Research Abstract |
本研究では、金属をフェムト秒(fs)パルスレーザーで光励起し、電子励起状態の緩和及び、コヒーレント光学フォノンの緩和を時間分解測定し、特に未解決の吟間領域である1ピコ秒(ps)以下の電子-電子散乱と電子-格子散乱のダイナミクスを明らかにすることを目指している。本年度は、約0.5μmの移動精度を持つ電動リニアステージを用いて、スロースキャン型ポンプ-プローブ法により、金属単結晶の光励起電子及びコヒーレント光学フォノンの観測を試みた。その結果、未だ電子-格子ダイナミクスが観測されていない遷移金属であるZn及びCdにおいて、光励起電子及びコヒーレント光学フォノンによる超高速反射率変化を測定することに成功した。 光源は、波長800nm(1.55eV)、パルス幅約25fsのTi:sapphireレーザーを用いた。また、試料の温度を7Kから295Kまで変化させた。ZnやCdでは、1.55eVの光でフェルミレベル近傍でのバンド間遷移(主にL点)が起こると考えられ、非平衡電子分布が生成される。それとほぼ同時に誘導ラマン過程によりコヒーレント光学フォノンが励起されると考えられる。時間分解反射率変化は、パルスの自己相関関数でほぼ近似できる幅で立ち上がり、その後、数100fsで緩和した。それと同時に、Znでは周波数約2.3THz(時間周期にして約440fs)のコヒーレント光学フォノンが観測された。これらの時間応答を、減衰振動とTwo Temperature Model(TTM)から導かれる非平衡電子及び格子温度の時間変化との線形結合で表される関数を用いてフィットした。得られた非平衡電子の電子-格子散乱による緩和時間は7Kで約450fsであった。またコヒーレント光学フォノンの寿命は7Kで約12psであった。この電子-格子散乱の時定数は、温度の上昇とともに約600fsまで増加した。この振る舞いは、TTMモデルから導かれる電子-格子散乱時間の温度依存性(Tの一次関数で変化する)と良く一致することが分かった。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] M.Hase, M.Kitajima, A.M.Constantinescu, H.Petek: "The birth of quasiparticles in Si observed in time-frequency space"Nature. 426. 51-54 (2003)
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[Publications] M.Hase, M.Kitajima, S.Nakashima, K.Mizoguchi: "Forcibly driven coherent soft phonons in GeTe with intense THz-rate pump fields"Appl.Phys.Lett.. 83・24. 4921-4923 (2003)
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[Publications] O.V.Misochko, M.Hase, M.Kitajima: "Phonon autoecho in Bismuth and Antimony single crystals"JETP Letters. 78・2. 75-79 (2003)
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[Publications] N.Fukata, Y.Yamamoto, K.Murakami, M.Hase, M.Kitajima: "In situ spectroscopic measurement of structural change in SiO2 during femtosecond laser irradiation"Appl.Phys.Lett.. 83・17. 3495-3497 (2003)
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[Publications] K.Mizoguchi, M.Hase: "Coherent phonons in semimetals and semiconductor superlattices"Recent Research Developments in Chemical Physics. 3. 439-484 (2003)
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[Publications] N.Fukata, Y.Yamamoto, K.Murakami, M.Hase, M.Kitajima: "In situ spectroscopic measurement of defect formation in SiO2 induced by femtosecond laser irradiation"Physica B. 340-342. 986-989 (2003)
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[Publications] 溝口 幸司, 長谷 宗明, 谷 正彦: "超高速光エレクトロニクス技術ハンドブック(第7章4節)"サイペック(株). 618 (2003)