2005 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属化合物における共鳴X線分光の第一原理計算に基づく理論解析
Project/Area Number |
15740196
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
高橋 学 群馬大学, 工学部, 助教授 (50250816)
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Keywords | L吸収端共鳴X線散乱 / 遷移金属 / クロム / 第一原理計算 / スピン密度波 / 電荷密度波 |
Research Abstract |
遷移金属やその化合物の中には長周期の電子構造をとるものがある。また、機能性材料となる遷移金属人工多層膜も結晶構造に由来して長周期の電子構造をとる。そのような電子構造を直接観測する手段として遷移金属のL-吸収端共鳴X線散乱を応用した場合、電子構造についてどのような知見が得られるか3d遷移金属を例に第一原理バンド計算を利用して理論的考察を行った。L-吸収端の場合、遷移金属の3d状態の情報が直接的に得られる、X線の波長が長いため長周期構造を見るのに適しているという特徴がある。一方で、高真空中で実験しなければならない、表面の状態に影響されやすいなどの問題点もある。そのため、理論的な考察が必要不可欠である。本研究ではスピン密度波状態をとる金属クロムにおけるL-吸収端共鳴X線散乱スペクトルを考察した。その結果、電荷密度波に対応するブラッグ反射点において体心立方格子の基本ブラッグ反射点における散乱強度に匹敵するほどの非常に強い共鳴散乱強度が観測され得ることが分かった。この散乱強度はCrの3d状態のうち非占有状態の局所部分状態密度の空間変化によって生じているが、その空間変化は主に正弦型スピン密度波に起因する交換ポテンシャルの空間変化によるものであることが結論づけられた。従って、Crの場合には交換ポテンシャルの空間変化が電荷密度波の第一義的な原因になっているとしても、電荷密度波による電荷の空間変化を直接に見ているとは言い難い。一方、螺旋型スピン密度波の場合には、交換ポテンシャルは空間変化しないので、3d状態の局所部分状態密度の空間変化はなくなるのでX線散乱強度は非常に弱くなり、散乱強度のアジマス角依存性も正弦型スピン密度波の場合と異なったものになることが期待される。それ故、スピン密度波が正弦型であるか螺旋型であるかを判定する手段としてL-吸収端共鳴散乱が有効であることが示唆される。
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Research Products
(2 results)