2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15740234
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
樋上 和弘 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (60262151)
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Keywords | ジョーンズ多項式 / 結び目 / 保型形式 / WRT不変量 / チャーン・サイモンズ不変量 / モック・テータ函数 / ラマヌジャン / ザイフェルト多様体 |
Research Abstract |
色つきジョーンズ多項式をはじめとする結び目の量子不変量は、ウィルソン・ループ上の経路積分として定義される。同じ経路積分の手法を用いると、3次元多様体上の分配関数が定義される。この不変量は結び目不変量を用いて数学的に厳密な形に定式化でき、ウィッテン・レシェティキン・ツゥラエフ(WRT)不変量と呼ばれる。今年度は、球型ザイフェルト多様体のSU(2)WRT不変量の持つ性質を詳細に解析した。 球型ザイフェルト多様体とは、基本群が正多面体の対称性と関連づけられるものであり、有名な例としてボアンカレ球があげられる。ザギエとローレンスによって、ポアンカレ球のSU(2)WRT不変量が半整数重みを持つ保型形式のアイヒラー積分の極限値として表されることが示されている。本研究においてこの手法を拡張し、すべての球型ザイフェルト多様体についても、WRT不変量が保型形式のアイヒラー積分を用いて書き表せることを示した。この結果、保型形式の変換公式から不変量の漸近展開を厳密に求めることに成功した。この保型形式は共形場理論における分配関数として現れるものであり、チャーン・サイモンズ不変量やライデマイスター捩れといった位相不変量の持つ、保型形式、共形場理論との密接な関係が明らかとなった。また不変量にあらわれる保型形式の幾何学を調べ、基本群、つまり正多面体の対称性をもつことを明らかにした。この事実は量子不変量と基本群との密接な関係を示すものであり、今後の更なる発展が期待される。 さて、アイヒラー積分のもつ近漸近性は、ラマヌジャンによるモック・テータ函数のもつ性質と非常に似たものである。球型ザイフェルト多様体の量子不変量の具体的な表式を詳細に調べることにより、これらがモック・テータ函数の極限値と見なせることを明らかにした。この対応関係を用いて、新しいモック・テータ関数の候補をいくつか提出し、そのうちのひとつについては変換公式を求めることに成功した。ラマヌジャン以降、いまだ未解明なものが数多く残されているモック・テータ函数において、量子不変量との関連性という全く新しい側面を明らかにしたことにより、今後のテータ函数の研究の新たな飛躍が期待できる。
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Research Products
(5 results)