2005 Fiscal Year Annual Research Report
3次元非圧縮非粘性流体方程式の解の有限時間爆発についての数値的研究
Project/Area Number |
15740237
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 剛 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (20346076)
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Keywords | 流体力学 / 乱流 / オイラー方程式 / 解の爆発 / 複素領域での偏微分方 |
Research Abstract |
本研究では、解析的な初期条件から出発したオイラー方程式の解を空間座標(空間は全方向に周期境界条件)について解析接続を行った複素空間流れ場を解析してきた。特に(実空間)流れ場の数値データ(スペクトル法で得られたフーリエ係数)から複素空間に存在する特異性の情報を得て、その性質を議論してきた。鍵は高波数でのフーリエ係数の漸近的振舞で、それを同定することで複素特異点がつくる境界が構成可能であり、境界近傍での物理量の様子を過去2年間に研究してきた。この際にはエネルギースペクトルなどとは異なり、波数空間中の全ての方向について波数依存性を同定することが肝要になる。ここでの顕著な点として、境界近傍で渦度が代数的に爆発している数値的証拠が得られている。初期時刻周辺の解析を今年度も継続し、その結果、この代数的爆発の指数が初期条件に依存することが判明した。ここでは初期条件によって指数が有意に異なることをフーリエ係数の漸近形から引出すために、加速法を応用した。代数爆発が高精度で測定できたため、理論的理解の可能性も探った。この結果、適当な座標変換後での複素空間における澱み点の構造が代数冪を決定しているとの示唆を得た。幾つかの単純化を行うと代数冪が解析的に求められるが、その値は数値解析結果の冪と近いものの、完全な一致をみていない。さて、フーリエ係数の漸近形を詳細に解析するためには、高い空間解像度のみならず、倍精度以上の数値精度が必要である。そのため初期時刻周辺をこえる解析は難しかった。しかし、限られた波数、精度でも先に触れた加速法を応用することで効果的に漸近形が決定できることが判明した。特に初期時刻を超えた場合、共役な複素特異性間の相互作用が始まり、フーリエ係数の絶対値は振動し、偏角も複雑に変化しはじめる。これらの変化を経ることで、複素特異性は初期条件の記憶を忘却し、乱流にみられるような普遍的な状態に達するものと考えられる。加速法の応用により、この変化中のフーリエ係数の波数依存性を同定し、実空間への接近の様子を調査することが可能であるとの示唆を得ている。
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Research Products
(1 results)