2003 Fiscal Year Annual Research Report
相互作用のある多重軌道ランダム格子模型の染色的構成と基底状態の指数定理
Project/Area Number |
15740245
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山中 雅則 日本大学, 理工学部, 講師 (20307698)
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Keywords | 強相関電子系 / 厳密解 / グラフ理論 / 四色問題 / 量子相転移 / 低次元多様体 / ランダム格子 / NP-問題 |
Research Abstract |
多重軌道を有する格子フェルミ粒子系を一般の高次元ランダム格子上に構成した。この構成方法においては、ある充填率において基底状態の厳密解の構成が可能であることを証明した。基底状態は新奇な軌道秩序状態をとる。これはこれまでの2成分のフェルミ粒子系における反強磁性秩序状態の多成分系への一般化に対応している。本模型においては、互いに隣接した格子点では軌道成分が排他的な状態がエネルギー的に安定化する。この場合、厳密解の構成には本研究により提案を行う染色的構成が効率的である。格子点をバーテックスとし、互いに隣接する格子どうしをエッジとする双対グラフを構成し、フェルミ粒子の成分種を「色」に対応させた場合、厳密解の構成可能条件が双対グラフのバーテックス染色可能条件に一致することを厳密に証明した。これにより、前世紀に証明された有名な「四色定理」が量子統計力学に関連付けることができる。このような例は、これまでに古典統計力学系では知られていたが、量子模型においては初めての具体例である。また、この構成可能条件は、与えられた格子の位相幾何学的性質によっても制限されることを示した。つまり、構成に必要なフェルミ粒子の軌道成分数は一般次元格子を2次元多様体に規約埋め込みを行い、埋め込まれた多様体の種数を関数とする非自明な構造を持っている。また、基底状態は一般に縮退しており、その縮退度は染色多項式により厳密に与えられることを証明した。染色多項式は、この場合2次元多様体の種数を変数とする代数多項式であり、これが模型の基底状態(つまり、ゼロモード)の数を記述している。これは一種の指数定理であると解釈することができる。加算無限格子において以上の手続きは一般には多項式時間で終了できない。このようなNP問題との関係の解明は今後の課題である。基底状態の物理的性質は以下にあげることができる。正規格子上では、2成分模型の基底状態は縮退がないのに対し、この他成分系では排他的になれる成分に助長度があり、一般的には縮退している。このため特異的な非秩序状態である「染色的ガラス相」が安定化するパラメータ領域も存在する。この効果はランダム格子上において顕著である。ランダム格子上では、2成分系におけるフラストレーションの他成分系に拡張された現象が発生する。この場合、他成分であることを反映し、フラストレーションは空間的に大局的となり、2成分系とは異なり決定論的な現象とならないことを示すことができた。
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