2003 Fiscal Year Annual Research Report
ポジトロニウムはいかにして形成されるか-ポジトロニウムビーム開発に向けて-
Project/Area Number |
15740256
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
篠原 紀幸 山口大学, 医学部, 助手 (40335758)
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Keywords | ポジトロニウムビーム / オルソポジトロニウム / ポジトロニウム形成確率 / 陽電子 / 陽電子衝突 |
Research Abstract |
ポジトロニウム(Ps)は電子の反粒子である陽電子と電子とが束縛した水素原子様粒子で有限の寿命をもつ。全スピン0のパラポジトロニウム(p-Ps)は平均寿命125psで消滅後2本の単色511keVγ線を放出する。一方、全スピン1のオルソポジトロニウム(o-Ps)は平均寿命142nsで3本のγ線を放出する。消滅γ線のエネルギースペクトルは0から511keVと幅広い。o-Psが物質と相互作用するとき、Ps中の陽電子が物質中の電子と対消滅をおこして固有寿命よりも短い寿命で消滅することがよくある(ピックオフ消滅)。常磁性物質の場合には、孤立スピンとの相互作用によってo-Psはp-Psに変換された後消滅することもある。このスピン転換消滅のほうがピックオフよりもはるかに起こりやすい。近年ではこの特長を利用して固体表面に関する物性研究が行われていて、微量なスピンでも応答性がよいことから磁気記憶素子等の機能性材料の開発研究への利用が期待されている。ところが現状では試料中でPsを形成させており研究対象が限られていた。そこでより広範囲に研究を進めていくためにo-Psビームの実用化が求められている。いまのところArガスでPsを形成するビーム装置が開発されている。しかしPsはいくつかの材料で形成されることが知られていて果たして気体が適切かどうかはわからない。そこで本研究では有効なビーム用Ps源開発のための基礎研究としてまずは気体におけるPs形成確率を正確に系統的に測定する装置を製作する。現在は実験装置の製作を終え動作テストを始めたところである。実験装置は放射性線源Na^<22>(約100μCi)を組み込んだ陽電子源と衝突室、そして衝突室の周りにある2個のNal検出器からなる。Nal検出器を使って衝突室内で形成されたPsの消滅γ線を検出しPsの生成量を測定する。γ線計測システムとしてCAMACシステムを当補助金で購入した。
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